「ルール守れない人は乗らないで」電動キックボードLUUPへの“厳しい目”強化の意図は? 事業者の苦渋と専門家の見解は
■すべての電動マイクロモビリティが共存できる社会になるには
LUUPではこの4月に京都の訪問介護事業者との提携を発表。同社の提供する電動キックボードなどを活用した訪問介護の効率化のための取り組みを実施する。 「当該の訪問介護事業者では、これまで自動車やバイクなどで利用者さま宅に訪問して来られました。訪問介護は非常に体力を使う仕事であり、移動も多いため、自転車では『辛い』『疲れる』。そのため採用には運転免許を持っている方に限定されるという課題を抱えておられました。また利用者さま宅の近隣に駐輪場や駐車場がなく、支援を断らざるを得ないケースもあったと聞きます。そうした介護現場の課題解決の一助として、LUUPをご活用いただく運びとなりました」(Luup・池上氏) これは1例だが、電動キックボードを必要とする事情はさまざまありそうだ。ところがLuupの池上氏は「必ずしも電動キックボードである必要はない」という。 「Luupのミッションは『街じゅうを「駅前化」する』ことであり、『日本中のすべての人が移動に困らない社会』を目指しています。そのために推進しているのは電動キックボードそのものではなく、ポート(駐輪場)の普及拡大です。現状はさまざま勘案して電動キックボードを採用していますが、今後は特定小型原付の仕様を満たす新たな形状の電動マイクロモビリティ──たとえば高齢者、体に障害のある方などに適した3~4輪の車両が開発されることも考えられます。自動運転の技術がそこに加われば、さらに利用可能性が広がるはずです」(Luup・池上氏) 歩行者、自動車、自転車、そして多様な電動マイクロモビリティ。それらが安全に共存できる理想的な社会は実現するのか、最後に鈴木准教授の見解を聞いた。 「今はまだ過渡期だと思われます。日本の道路は電動マイクロモビリティが走行することを前提としてデザインされていません。国が推進する以上は『ここを走れば安全ですよ』とメッセージするような道路の整備は必須です。昨今、増え続ける自転車走行レーンももう少し安全面を考慮していただきたい。加えて交通ルールも誰もがわかりやすく、守りやすい工夫をしていただきたいですね」(鈴木准教授) 市民の命と暮らしを守るのは行政の義務。そのために法律や道路が整備され、そのルールに則ることで安全が確保されるのが行政と市民の適切な関係だ。移動の選択肢がこれ以上狭められないよう、交通デザインの成熟を期待したい。