「ルール守れない人は乗らないで」電動キックボードLUUPへの“厳しい目”強化の意図は? 事業者の苦渋と専門家の見解は
■“ほぼ自転車扱い”となった電動キックボード、意図せぬ交通違反が増加?
昨年7月の改正道路交通法の施行で、“特定小型原動機付自転車”という新たな車両区分が追加され、16歳以上の年齢制限はあれど“ほぼ自転車扱い”となった電動キックボード。以後、交通違反の検挙数は施行前後の半年で約5倍となっており、警察庁では「利用者増加と取り締まり強化で検挙が増えた」と見ている。 だが、交通工学が専門の東海大学・鈴木美緒准教授は「ライド数と違反者数が比例するのは事実。しかし何より問題は電動キックボードに関する交通ルールが周知徹底されていないこと」だという。 「電動キックボードの検挙で最も多いのが、歩道乗り上げをはじめとする“通行区分違反”です。『電動キックボードは歩道も走行できる』と誤認識されている方もいますが、厳密には『6km/hモードが搭載された車両のみ』かつ『6km/hモード制限下』かつ『特定の標識・表示のある一部歩道』かつ『歩道の車道側』に限って特例的に走行が認められています。検挙された人の中にはこのルールを知らず、意図せず交通違反をしていた事例も多かったと思われます」(鈴木准教授) なお上記のルールは自転車にも同様に課せられている。そのほか電動車椅子やシニアカーといった電動モビリティ全般に、歩道を走行する際には「最高時速6km/h」の制限がある。これは人間の早歩き程度の速度で、万が一、歩行者がふらつくなどした場合にもよけられるペースだ。 「“ほぼ自転車扱い”となったことにより、自転車と同じ感覚で電動キックボードを利用する方が増えたと感じます。ただし電動キックボードは人力で漕ぐ自転車とは異なり、速度モードが設定できます。たとえばLUUPの電動キックボードには20km/hモードがありますが、この設定で歩道を走行するのは交通違反です。また市販の電動キックボードの中には最高速度20km/hを超える車両もあります。これらは特定小型原付ではなく、原付バイクなどと同様に運転免許やヘルメット着用等の義務がありますし、歩道の走行も厳しく禁止されています」(鈴木准教授) こうした多様な車両が一括りに“電動キックボード”として語られ、「ごっちゃになっている方も多い」と鈴木准教授。さらに「免許不要」「ヘルメット着用の努力義務」「6km/hモードで一部歩道の走行が可能」といった法整備がされたことで、交通ルールの周知徹底が未完全のままにたちまち電動キックボードの利用者が街に増えた。