なぜエリザベス女王杯は3連単339万円強の大荒れ決着となったのか…アカイイトが大波乱を演じ人気馬が共倒れした理由
ただ不安がなかったわけではない。まずは距離。レイパパレは6連勝後に2200メートル戦で2連敗。同じ舞台の宝塚記念で3着に入った実績から1番人気に押し上げられたが距離がベストではないことは明らかだった。 それでも追い切り後に初コンビを組むルメール騎手は「ポイントはスタートしてリラックスして走ることができるかどうか。3、4番手でリズム良く走らせたい」と話していた。 レースでは4番手のインをキープ。さすが名手と思わせたが、見た目にも終始力みながらの追走となった。前半1000メートルの通過が59秒0と淀みのない流れになったが、これによって息が入りづらく、先行グループには厳しい展開になった。すぐ横にウインマリリン、直後にアカイトリノムスメが張り付いていたのもプレッシャーになったようで、直線の入り口では先頭に立ったものの明らかに距離に泣きゴール前で失速した。 ルメール騎手は「折り合いを欠いて、ずっと引っ掛かった。冷静さがありませんでした。その分、動くのが早くなってラストストライドで止まってしまいました。距離が長すぎたし、コントロールが難しかった」と肩を落とした。 展開のアヤなのだろう。人気馬は、それぞれを意識するあまり、向正面では3頭が一塊となったが、共倒れとなった。秋華賞からG1連覇を狙ったアカイトリノムスメも力を発揮できなかった。“強い3歳”の代表として3冠牝馬の母アパパネの雪辱と4年ぶりとなる3歳馬の勝利を目指し、レイパパレを徹底マークする作戦に出たが、直線で伸びあぐねて7着に沈んだ。 戸崎圭太騎手は「結果的に前に行った馬にとって苦しい形になりました。外から来られた時には反応できませんでした」と悔しがった。国枝栄調教師も「残念無念。馬ができすぎていたのかな。これからまた経験を積んで、だね」と振り返った。 しかし、スタミナ十分のこの馬にしては不可解な内容。馬体重はプラス4キロだったが、中3週で2度の関西への輸送が微妙に影響したのかもしれない。 3番人気のウインマリリンは、明らかに体調面に問題があったようだ。オールカマーを制覇して、いよいよG1制覇の期待が高まったところで中間、右の肘腫が熱を持った状態になるアクシデント。最終追い切りはそれなりに動いていたが、ベストコンディションではなかったと言える。レイパパレと併走する形で3番手につけたものの、堅実な走りをする馬らしくない16着の大敗。 横山武史騎手は「状態面が良くなかったかもしれません。本来のウインマリリンではありませんでした。返し馬で落ち着いていたのですが、その反面、元気のなさも感じました。掛かるぐらいの馬がそういう面もありませんでした」と指摘した。 払い戻しはアカイイトの単勝が6490円もつき、2着に7番人気のステラリアが入ったことで馬単も13万7500円(128番人気)となり3連単はなんと339万3960円で1838番人気での決着となった。 時として大舞台で超特大の大穴が出るのも牝馬のG1というのも肝に銘じておきたい。ストレイトガールが勝ち、超伏兵が2、3着に入った2015年ヴィクトリアマイルの3連単2070万円馬券しかり、クィーンスプマンテとテイエムプリキュアが1、2着に粘り込んだ2009年エリザベス女王杯の3連単150万馬券しかり…大穴は忘れたころにやってくるのだ。