北京五輪金を狙う紀平梨花にロシアジュニア勢の4回転は脅威となるのか?
フィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルで優勝した紀平梨花(16、関大KFSC)が11日、大会のあったカナダから成田空港に凱旋帰国した。平昌五輪の金メダリストで向かうところ敵無しだったアリーナ・ザギトワ(16、ロシア)を下しての価値ある優勝。20日からは全日本選手権が控えているが、早くも4年後の北京五輪での金メダルへの期待の声が高まっている。だが、同時開催されたジュニアのGPファイナルでは1位から5位までをロシア勢が独占。しかも複数の有力選手が4回転ジャンプという武器を持つ。トリプルアクセルでザギトワに勝った紀平に4回転は脅威となるのか? ロシア勢との対決の構図は4年後まで続きそうだ。
紀平がザギトワに勝った2つの理由
紀平の衝撃が止まらない。GPファイナルで“女王”ザギトワを倒した紀平の凱旋帰国に成田空港には約80人ものメディアや大勢のファンが殺到し大混乱となった。 「記者さんが、たくさんいてびっくりしました。ファイナルの優勝ということがすごく大きなことだったんだなと改めて思います」 GPファイナルでは、GPシリーズで2試合続けて出遅れていたSPで代名詞のトリプルアクセルを決めてザギトワに4.58差で首位に立った。 「今回はSPが本当によかった」 フリーでは冒頭のトリプルアクセルで両手をつくミスを犯したものの、プログラムを急遽変更。次をトリプルアクセル+2回転トゥループのコンビネーションに変えてトリプルアクセルを成功させた。 「いつも練習の時からリカバリーの練習をしていてトリプルアクセルが決まらなかった場合は、これまでは、ダブルアクセルやトリプルトゥループにしたりしていたんですが、今回はファイナルだったので挑戦としてトリプルアクセルにしました。計算をして、ダブらないように練習していたので、それを試合でも出せました」 フランス杯でも冒頭のトリプルアクセルの連続ジャンプに失敗したが、この時は、ダブルアクセル+3回転トゥループにしていた。だが、今回は思い切って再度トリプルアクセルに挑戦して決めてみせたのである。 一方、足を痛めていたとされるザギトワはコンビネーションジャンプで3回転ルッツの後ろにつける3回転トゥループが1回転トゥループになって4点ほどを失う“らしくない”ミス。結局、紀平は2位のザギトワに6.59点差をつけてシニアデビューイヤーにGPファイナル初優勝。2005年の浅田真央氏以来、13年ぶりの快挙となった。 元全日本2位で、現在、福岡で後進の指導を行っている中庭健介氏は、ザギトワと比較して紀平には、2つの優位点があったと分析した。 「やはり、トリプルアクセルの力です。今回は最初のトリプルアクセルがダウングレードの判定になり基礎点がダブルアクセルになってしまいました。しかし、2度目のトリプルアクセルは見事に成功しました。この成功に尽きると思います。 フランス杯でも冒頭のアクセルで失敗して続くトリプルアクセルの予定を変更していました。今回はフランス杯よりも大きなミスでしたが、臆することなく大舞台で予定通りに挑んで成功した事が大きかったです。しかもしっかりとコンビネーションにするところも日々の練習の賜物でしょう」 適応力の高さが際立った。フリーで7つあるジャンプの基礎点の合計は、互いに1つずつジャンプにミスがあったが、トリプルアクセルが効き紀平は47.95、ザギトワは44.04で、3.91の差がついていたのである。 2つ目の優位点はジャンプ後の着氷。 「もうひとつの差は着氷後のフォローの美しさです。紀平さんは流れるようなランディングを見せますが、ザギトワさんは、そこにターンやステップなどの細かい動きをすぐに入れてきます。ジャンプの前後に細かい技術を入れることが、昨シーズンから当たり前になってきていて、それは高度な技術ですが、それゆえに流れを失うケースもあります。紀平さんのジャンプに対するGOE(出来栄え点)が高いのもランディングの美しさが影響しています。正確な踏み切り、空中での軸の安定がなければ、こういうフォローはできません。紀平さんは決してトリプルアクセルだけでザギトワさんに勝ったわけではないのです」 一躍、紀平は4年後の北京五輪での金メダル候補として注目されるようになった。