北京五輪金を狙う紀平梨花にロシアジュニア勢の4回転は脅威となるのか?
ロシア勢に勝つには4回転が必要なのか?
だが、強力なロシア勢のライバルはザギトワだけではない。4年後の北京五輪で主力になってくるジュニア世代が、今回のジュニアのGPファイナルで1位から5位を独占したのだ。 しかも、14歳のアレクサンドラ・トルソワ、アンナ・シェルバコワの2人は4回転ジャンプを跳ぶ。トルソワはサルコウ、トゥループだけでなく、男子でも難しい4回転ルッツまで習得している。今大会では、4回転もトリプルアクセルも持たない15歳のアリョーナ・コストルナヤが、計217.98点のハイスコアで優勝。公式練習では、4回転ルッツ+3回転トゥループの連続ジャンプまで成功させていたトルソワは、本番では失敗して、計215.20点で2位となったが、彼女らが、今後、4回転の成功率を高めてくると、紀平のトリプルアクセルでは対抗できないのかもしれない。 中庭氏は、こんな見解を持つ。 「現状では紀平さんのトリプルアクセルで十分に勝てると思います。GOEの幅も含めたルール変更により、ジャンプの難易度や種類を競うよりも、ひとつひとつのジャンプの完成度、演技トータルの芸術性、作品性が高く評価される傾向にあるからです。逆にミスした場合には得点が伸びません。しかも、現在は、女子ではSPで4回転は禁じられています。フリーだけの4回転で、しかも、失敗率の高いジャンプでは、それほど大きなアドバンテージにはなりません。ただし、4年後となるとまだ不確定要素が多いということも頭に入れておかねばなりません。そう考えると今の段階での北京五輪の展望を予想することは難しいのです」 中庭氏が言う不確定要素とは、今後のルール変更や、現在16歳の紀平や、ロシアのジュニア世代の、この先4年間の成長度にある。女子フィギュア選手につきまとう肉体の変化という超えなければならない壁。ザギトワも7センチ身長が伸びたため、技術の修正が追いついていないという指摘まである。 「今後、ルール改正や流れにより、女子のSPでの4回転が認められたり、ジャッジの傾向が変わる可能性も考えられます。それでも紀平さんは4回転を十分に跳べる可能性を持つ選手でしょう。すでに練習しているとも聞きます。ルールが変わってもロシア勢に対抗できると思います。ただロシアの選手層を考えると4年後にはまた新しい人材がポンと出てくるのかもしれません。そして、さらなる問題は紀平さんが、今後出てくる肉体の変化に、どう対応するのか、という課題です。女子は思春期に大きく成長しますし、ウエイトコントロールの問題もあり、怪我のリスクがつきまといます。4回転ジャンプは肉体へのダメージが大きい技術ですからなおさらです」と、中庭氏は危惧している。 最大のライバルであるロシア勢との争い、そして紀平自身の内なる戦いも北京五輪まで続くのだ。 紀平は、この日、北京五輪について聞かれ 「もし五輪に出られたとして、もっと緊張したり、重圧も感じると思います。緊張感にも打ち勝って試合にもっともっと強くなりたいです」と力強く言い切った。前しか向いていない。 まずは、20日(女子シングルSPは21日)から大阪で始まる全日本選手権。来年3月の世界選手権の選考会を兼ねる。 「全日本で今回の反省点を踏まえてさらに良い成績を残せるように、世界選手権にも出られるように頑張りたいです。頑張って大晦日にお姉ちゃんと遊びに行けたらなと思います(笑)」 笑顔の16歳にニューヒロインに気負いはなかった。