TWICE日本人ユニット・MISAMOによる安室奈美恵カバーの真意、世代や文化を受け継ぐカバー曲本来の役割への原点回帰
■「ただの安室奈美恵カバーではない」、MISAMOとJ.Y.Park氏による相互作用を生む土壌
今となっては、K-POPのアイドルグループに日本人がいるのは当たり前の光景と言える。その土壌を作ったのは、間違いなくMISAMOの母体であるTWICEの成功によるところが大きい。TWICEの国を跨いでの大ブレイクをきっかけに、日本人メンバーを含む多国籍グループが増えたと言っても過言ではない。そんなMISAMOが伝説の歌姫の名曲をカバーしたから話題になったのか…いや、そうではないだろう。 双方のファンからの反響が大きいように、今回のカバーにはMISAMOのファンであるZ世代とかつての安室ちゃんファンであるミドル層、J-POPとK-POPという世代や文化がしっかりとつなげられている。この背景の一つには、近年のY2K(Year2000)ファッションの再ブームも挙げられる。厚底ロングブーツやルーズソックス、ミニスカートなどいわゆるギャルファッションであり、それを牽引していた一人が安室奈美恵だ。それが現在、“平成レトロ”として現代風にアップデートされており、このアップデートそのものが実は、今のK-POPの根底にあるとも言える。 実際、MISAMOやTWICEのプロデューサーであるJ.Y.Park氏の安室奈美恵へのリスペクトは大きい。もともとMISAMOの3人は幼少期から安室奈美恵のファンであったと語っているほか、J.Y.Park氏も過去のインタビューで「日本でやりたいこと」を問われた際、「安室奈美恵さんの曲を作ることです。でも、安室奈美恵さんが引退してしまって。安室さん、考え直してくれませんか?」と懇願している。 カバーは、そもそもの原曲の前では負けてしまうことが度々とあった。だが日本が生み出した伝説の歌姫の名曲を、プロデューサーであるJ.Y.Park氏とK-POP日本人アーティストの先駆者である3人がリスペクトを持ってカバーしたことでファン同士が相思相愛という相互作用できる土壌が形成された。これこそ、文化や世代を超える“カバー”本来の意義への紛れもない原点回帰といえるだろう。 (衣輪晋一)