「最後はやっぱり沙織さんと…」勇気を振り絞って伝えた最初で最後の〝お願い〟心震わせるエースへの想い【迫田さおりさんコラム】
◆バレーボール女子元日本代表・迫田さおりさんコラム「心の旅」
好きな言葉は「心(こころ)」だという。バレーボール女子元日本代表のアタッカー、迫田さおりさんは華麗なバックアタックを武器に2012年ロンドン五輪で銅メダル獲得に貢献した。現役引退後は解説者などで活躍の場を広げながら、スポーツの魅力を発信しようと自身の思いをつづっている。【#OTTOバレー情報】 ■木村沙織さんとWピースを決める迫田さおりさん【写真】
「もう少しだけ一緒にバレーがしたいです」
実力は言うまでもなく、人気面も含めてバレーボール界のアイコン的な存在でした。木村沙織さんです。1歳上の先輩で東レアローズ(現東レアローズ滋賀)や日本代表でずっと近くにいさせてもらいました。一緒に戦う中で数え切れないほど心を震わせてくれた大切な人です。 2016年リオデジャネイロ五輪の後のことです。私が現役をあと1年続けようと決めた際、真っ先に心に浮かんだのが「最後はやっぱり沙織さんとバレーがしたい」―。偽りのない素直な感情でした。悩んだ末に想(おも)いを伝えました。結論から言うと、沙織さんは引退を1シーズン先延ばしにしてくれました。「ありがとう…」とほほ笑みながら、うなずいてくれた、あの2人だけの時間は私の宝物です。 当時、沙織さんはリオ五輪を区切りにすることも視野に入れていました。常に結果を求められ、心身をすり減らしながらコートに立っていたのに、体をつくり直して「もう少しだけ一緒にバレーがしたいです」なんて…。自己本位な気持ちを伝えるのにはためらいがありました。最初で最後のつもりで勇気を振り絞って伝えた「お願い」を受け止めていただきました。 沙織さんはきっと満身創痍(そうい)だったはずです。それでも自分で決めたトレーニングメニューを黙々とこなしていました。打ち明けると、私には何か一つでもいいので、沙織さんを上回れるところはないか、という思いがありました。技術では及びません。思いあまって「ケアをしっかりする」「食事をきちんと取る」など勝手に挑戦していた時期もありました。