「政商」マスク氏、異例の権力を手中に トランプ次期政権の決定に再三介入
政府機関を4分の1に削減?
「効率化省」によって政府の人員や予算をどれだけ削るのか。マスク氏は10月初旬に公開されたインタビューで「すべての連邦機関を見ていく。本当に428も必要だろうか。人々が聞いたことがないようなものもたくさんある」と指摘。約4分の1に相当する「99まで減らしてもやっていけるはずだ」と豪語した。 10月末にトランプ氏の選挙集会で登壇した際には、連邦予算を「少なくとも2兆ドル(約315兆円)」削減できるとの見方を披露した。連邦政府の2024年度の支出が6兆7500億ドル(約1060兆円)だったので、年間2兆ドル規模の削減という意味であれば、政府支出を約3割も減らすことになる。 ただ、これらはまだトランプ氏が当選する前のアイデアだ。11月下旬にマスク氏とラマスワミ氏はWSJに寄稿し、「効率化省」が進める取り組みについて説明した。政府支出の削減規模については、「議会で承認されていないか、議会が意図していなかった方法で使用されている年間5000億ドルに狙いを定める」と表明。これには、非営利法人の公共放送機構(CPB)や国際機関への資金供与が含まれるとした。 もっとも、削減目標が2兆ドルと5000億ドル(約80兆円)のいずれであったとしても、こうした大幅カットは難しいとの見方が強い。というのも、日本と同様に米国でも、政府支出の大半は社会保障や医療保険関連が占める。これらの分野に切り込もうとすれば、国民からの反発は必至だ。
「テスラだけ優遇」警戒
マスク氏がトランプ氏に接近した理由については、さまざまな観測が出回っている。「効率化省」も活用しながら、自身が率いる企業に対する当局の監視を弱めたり、規制を有利なものに変えたりすることが狙いの一つではないかとみられている。バイデン政権下では、運輸省道路交通安全局(NHTSA)がテスラに、連邦航空局(FAA)がスペースXにそれぞれ厳しい目を向けてきたためだ。 トランプ次期政権は、自動運転に関する連邦規制の整備を計画していると報じられている。テスラで自動運転タクシーへの参入を目指すマスク氏は以前から、州ごとに自動運転車を走行させるための承認を受けなければならない現状の仕組みに不満を持っていた。 日系自動車メーカーの関係者は、自動運転だけでなく排ガスなどに関する規制でも「マスク氏がテスラに有利な変更を働き掛ける可能性は十分考えられる」と警戒。トランプ氏がメキシコやカナダに対する関税引き上げを宣言し、両国に工場を持つ自動車各社は身構えているが、テスラがメキシコに新工場の整備を計画していることから、「テスラだけ関税が免除されることもあり得る」と日系メーカー関係者は注視している。