日立で進む「男性の生き方改革」。男なら出世すべき? パパ社員らの葛藤
日立製作所の男性社員らが、「男なら仕事を優先すべき」「出世すべき」というジェンダーバイアスに基づく風潮を変えようと、動き出している。 同社で“男性の働き方・生き方改革”を掲げて活動する有志グループは、約70人。 彼らの活動は従業員の自発的な活動である「ERG(Employee Resource Group)」の一環だ。「(組織における)マイノリティに居場所を」を合言葉に、ボトムアップでの風土改革が進んでいる。
社内に「男性の働き方への偏見」ないか
日立製作所で「男性の働き方&生き方改革」を率いる多田宗広さん(デジタルシステム&サービス 社会ビジネスユニット 公共システム事業部)は、34歳。新卒で同社に入社し、「男性は働くもの」「男性は出世したほうがいい」という組織の空気を感じてきたという。 子どもが産まれ、仕事と家庭のバランスについてより考えるようになったのが、活動のきっかけだ。 男性の働き方について日立グループ内でどう捉えられているのか把握するために、従業員にアンケートを実施したところ、「男性=仕事」という意識を持っていたり、組織の風土を感じているのは、男性本人よりも女性に多かったという。 たとえば飲み会でも、「男性を急に誘うのはOKでも、女性はNGという空気があり悲しい」という女性の声もあったそうだ。 自らが持つバイアスに気づいていない当事者は多い。アンケートの声を元に議論し、その様子を社内に配信するなどして、まずは日立における男性の働き方の課題を洗い出している最中だ。 「男性の働き方についてのバイアスが組織の中にあるのかどうか。もしあるのなら、それがどういうバイアスなのかを調べ、解きほぐしていくのが我々のミッションです」(多田さん)
企業の中のマイノリティに居場所を
多田さんらの活動は、日立が2023年夏からグループをあげて支援している、従業員の自発的な活動「ERG(Employee Resource Group)」の一環だ。狙いは、ダイバーシティを「ボトムアップ」で推進すること。活動は勤務時間として扱われ、会社から予算がつく。 現在は「男性の働き方&生き方改革」の他に、「キャリア採用者」「若手社員」「LGBTQIA +」「外国籍社員」「障がい」「ワーキングペアレンツ」「サステナビリティ」「女性の選択肢とトータルウェルビーイング」など9つのグループ、約1000人が活動している。 人財統括本部デジタルシステム&サービス人事総務本部 Chief Diversity, Equity & Inclusion Officerの中田やよいさんは、 「ERGはビジネスプロジェクトではないので、KPIは重視していません。まずはマイノリティに居場所を提供することが目的です」 と話す。 「組織は効率的に動かないといけないので、どうしてもマジョリティに最適化した制度や風土になっていきます。日立におけるそれは、シスジェンダーでヘテロセクシュアルで、日本で生まれ育ち日本で教育を受けた、40~50代の男性です。 ERGはそこから外れた人たちが共通の目的を持って集まるので、会社全体ではマイノリティでもERGの活動中はマジョリティになれる。ERGが自分に嘘をつかなくてもいい、安心できる居場所になれたらと」(中田さん)
竹下 郁子