「あまりの暑さにレールがゆがむ」見落とせば脱線、大事故…酷暑で鉄道ピンチ でも対処が難しい「深刻な事情」
夏の運転見合わせが「恒例」となっている路線もある。宍道(松江市)―備後落合(広島県庄原市)間を結ぶJR木次線。レール温度計が60度近くを示すと、張り出しを警戒して運転を見合わせる。今年8月もダイヤの乱れや運転見合わせが相次いだ。 昨年夏は、温度上昇による30分以上の遅れや運転見合わせが5件あった。うち2件はレール温度が規制値を上回ったため、観光列車が山間部の途中駅で足止め。乗客は規制値を下回るのを待つはめになった。 JR西日本側は「事前の運転見合わせは安全のため」と強調するが、沿線関係者からは不安定な運行を懸念する声も上がる。 「運休になってしまうと、観光列車の歓迎イベントも意味がなくなる」(島根県観光振興課) JR西によると、木次線は冬も大雪による運休や見合わせが多く発生しており、経営は赤字。沿線の自治体担当者は運行の安定を求めたが、JR側はこう漏らしたという。 「(見回りを強化するなど)木次線への投資は、現行以上は難しい」 ▽トラブル件数は20年前から大幅に増加
酷暑による鉄道への影響はどこまで広がっているのか。全国の鉄道会社は、運休や30分以上の遅れが発生した場合、原因などを国に報告している。その内容をまとめた「運転事故等整理表」を情報開示請求し、分析した。 その結果、暑さによるトラブル件数は、2000年代は0~5件程度だったのに対し、2018年度は最多の51件、23年度は2番目に多い47件に上った。 毎年の事故件数には凸凹があるため、「移動平均」を算出すると、年々増加している現状がより鮮明になった。試しに「3年移動平均」(1~3年目の平均、2~4年目の平均、3~5年目の平均…という順番で各年の平均トラブル件数を算出)で折れ線グラフにすると2002~04年度は年2件だったが、2021~23年度は31.7件まで増加している。 トラブルの内容は、木次線のように運転を事前に見合わせたり、信号機や踏切、分岐器などの金属部品が膨脹し、正常に作動しなかったりするケースが目立った。遅れの時間が30分未満など、報告されていないケースがあることも考えると、気温上昇によるトラブルはさらに多いとみられる。