「下町ロケット」題材にも 心臓病の子を救う“新技術”開発の裏側【WBSクロス】
ただ、髙木社長には漠然とした自信がありました。理由はある部屋の中にありました。 「ここは福井経編の頭脳。生地の頭脳を保管している」(髙木社長) そこには創業から80年見続けてきた生地サンプルが保管されていました。その数は10万点以上。シンフォリウムの開発で参考にした生地を特別に見せてもらいました。 「ズバリではないが、ヒントになった生地。メッシュという編み方、シンフォリウムの場合、一部体内への吸収を想定して目が広がる」(髙木社長) シンフォリウムの生地は体内で溶ける糸と溶けない糸で編まれており、手術後2年ほどで糸が溶けます。福井経編はメッシュ生地をヒントに、残った糸が約2倍まで伸びる編み方を開発したのです。 しかし、製品化するには大企業の力が必要でした。髙木社長が頼ったのが「帝人」です。製品化するための課題は、網目にふたをして血液を漏れないようにする技術でした。 帝人シンフォリウム開発責任者の藤永賢太郎部長によれば、初期の試作品では根本教授から「もうパリパリの状態で、『これ下敷きですか』と言われた。もっと柔軟性を施すような検討をしていた」といいます。 150以上の素材を試した結果、ゼラチンで網目を覆うことで血液が漏れない製品が完成。その後、動物実験や治験などをクリアして、構想から12年後の今年6月、シンフォリウムの製品化にこぎつけました。 医師と企業が開発した新技術。髙木社長は今後も新たな医療機器を開発していきたいと言います。 「根本教授は心臓外科医だが、私は経営者。この関係はアメーバみたいに広がった。新技術を作り上げるのは人間関係や人。人との出会いで新技術が出来上がる」(髙木社長) ※ワールドビジネスサテライト