イニエスタ初陣も神戸惨敗に三木谷怒りの無言スルー。V使者になれるのか?
トラップひとつを取っても、おそらくは高度な技術を要するはずなのに、簡単なように感じさせるテクニック。35分には田中順也(31)、44分にはウェリトン(30)へ絶妙のスルーパスを通す。反応こそできたがボールを受け取ることができず、そのたびに歓声がため息へと変わった。 ほんの一瞬のタイミングの遅れがチャンスの芽を潰した結果を、イニエスタの投入とともに右MFから右ウイングへポジションを変えた大槻周平(29)は、それでも努めてポジティブにとらえた。 「見ていなくても(イニエスタは)ボールを出してくる、と感じました。これは事前に周りを見ていたからこそできるプレーだとは思うので、僕たちがしっかり動いて彼と連携が合えば、必ず点を取れると思いました。だからこそ、もっともっと連携を深めていきたい」 ベルマーレの曹貴裁(チョウ・キジェ)監督(49)も、イニエスタが途中出場した瞬間から、171cm、68kgの小さな体の周囲に次元が異なる空間が生まれた、と感じずにはいられなかったという。 「彼がピッチに出たときのボール周りの空気感というか、ウチの選手が飛び込めない間があった。彼が小さなころから積み上げてきた、技術と呼ぶにはおこがましいくらいの、本当に類稀な状況判断力があるからこそ、あのレベルでずっとやって来られたのだと思いました」 コンディションは不十分ながら、魔法使いと形容される高度なボールコントロール技術、数手先のプレーを瞬時に読む高度な洞察力、そして創造性あふれるパスセンスの片鱗はのぞかせた。 「具体的に何パーセントという数字はわかりませんが、自分がまだトップのコンディションに到達していないことは感じています。次の試合へ向けて1週間準備する時間はありますので、90分間かどうかはわかりませんが、できるだけ長い時間、そして今日よりもいいプレーができると確信しています」 真っ先に「暑い」という日本語を覚えたほど、初体験と言っていい高温多湿の日本の夏にも、時間が経過すれば間違いなく順応できるとイニエスタは力を込めた。となれば、残された問題は前線の選手たちとのコンビネーションとなる。