「まるで井上尚弥選手です」なぜ藤井聡太21歳は八冠窮地でも“余裕”に見えるか…「極めつつある」タイトル経験者・中村太地36歳が驚く進化
前夜祭のスピーチに感じた「心理的な余裕」
さらに藤井叡王について、前夜祭などの様子を聞くと、語弊を承知の上で「心理的に余裕」があるのでは、と感じることがありました。 そう思ったのは、前夜祭のスピーチの言葉です。 藤井叡王は柔らかな表情を浮かべつつ、以下のようにお話しされたとのこと。 「明日から対局となりますが、スコア的には追い込まれて苦しい状況ではありますけれども(この表現に会場から笑い声)、しっかりと集中して皆様に楽しんでいただけるような熱戦にできるよう全力を尽くしたいと思います」 ギャラリーの表情をほぐすようなユーモアを自ら切り出しつつ、楽しんでもらえるような将棋を指したいという意気込みを語る。 その立ち振る舞いは、初めてのカド番とは到底思えないような風格だなと感じます。
藤井聡太の風格に井上尚弥が思い浮かんだワケ
あくまでここからは個人的な見解なのですが……藤井叡王の前夜祭の話や第4局の戦いぶりから、ふと頭の中に思い浮かんだアスリートがいます。 ボクシングの井上尚弥選手です。 5月に行われたスーパーバンタム級の4団体統一王座防衛戦、井上選手は初回にネリ選手のパンチを浴びてご自身初のダウンを喫しましたよね。ボクシングに関して詳しいわけではないですが、井上選手のコメントによると〈ダウンしたときのイメージトレーニング〉を以前からずっとしていたとのこと。 普通ならダウンを喫したら「マズい!」という心理が働いてすぐに立ってしまって、ダメージが残る“形勢不利”の中で戦いが進んでいってもおかしくないのでは、と思います。そんな局面で井上選手はカウントを聞きながら落ち着きを取り戻しつつ回復を図っていたそうです。そんな井上選手がラウンドごとに盛り返し、最終的には6回TKO勝ちを収める――という流れと、藤井叡王の第4局がオーバーラップしたのです。 ちなみに試合直後のインタビューで井上選手は〈皆さん、1ラウンド目のサプライズ、たまにはいかがでしょうか〉とおっしゃっていましたが、ファンへのサービス精神は前夜祭の藤井叡王とも同じだなと(笑)。
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