“職業選択の自由を制限”指摘も…再犯リスクに近づかないことは「当たり前」 性加害・小児性愛の治療専門家【日本版DBS】
国会で、日本版DBS(性犯罪歴のある人は子どもと接する業務に最長20年就けないとする仕組み)を含む、こども性暴力防止法案の審議が始まった。これまで3000人以上の性加害者の治療に関わり、「子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か」(幻冬舎新書)などの著書がある、精神保健福祉士・社会福祉士で大船榎本クリニック精神保健福祉部長の斉藤章佳さん(44)は、「性加害者の再犯防止は可能だ」と話す。 ▼性加害 20年治療続けても「自分には再犯リスクが」 “当事者”が語る日本版DBSに「足りない点」 しかし、そのためには、性加害のリスクが高まった時にとるべき行動などを身につける再犯防止プログラムを受け続けることが重要だという。
■子どもに関わる仕事を制限しても、他に仕事はたくさんある
──子どもにかかわる業務に就けない期間を、10年または20年とすることについて 期間の設定は非常に難しいと思いますが、10年以上再犯防止プログラムを受けても再犯する人がいます。私の臨床経験から言うと、その人自身が稼働年齢である以上、ずっと子どもに近づけないようにする制度が望ましいのではないかと思います。 ──職業選択の自由を制限するという意見もある 子どもに関わる仕事を制限しても、他に就く仕事はたくさんあります。クリニックのプログラムでは社会復帰の支援もしますが、子ども性加害の経験者、もしくは小児性愛障害の診断がつく方は、子どもの仕事に就かない、自分の引き金になるものやリスクに近づかないのは当たり前のことです。クリニックでは、就労指導の中で、子どもに関わる仕事を直接的・間接的に避けるのを原則としてアドバイスしています。 ──今回の法案には、加害者治療についての内容は盛り込まれていない。刑務所から出た後など、再犯防止の治療や自助グループに繋がる必要性をどのように考えるか 一番再犯リスクが上がるタイミングは出所後すぐです。刑務所で性犯罪再犯防止指導(通称R3)を受けている人も、今まで全く引き金のない環境から急に社会に出るので一気にハイリスク状況に陥ります。だからこそ、出所後に連続性のある処遇に繋げていくことが重要です。相談する機関があり、そこで担当する臨床の専門家が粘り強く伴走し、その後しっかり仕事に就けて、よりよく生きるためのルートに乗れる機会に繋がることがより実効性のある再犯防止になると考えます。