「ケトン食」に「クエン酸治療」… 「がん難民」の新たな選択肢「がん共存療法」の効果は? 自らもステージ4の緩和ケア医が実践
批判と支援の中で
だが、拙著は評価もされた一方で、医療関係者などからは「エビデンスのない個人的な体験記録に過ぎず、がん患者さんを惑わすものだ」などの批判や非難も受けた。 自分の病状が悪化する前に、当事者になって気付いた思いを表明しておきたいと考えて執筆したものではあるが、それら批判や非難に応える道は、とにもかくにも前述した「がん共存療法」のエビデンスを求めて臨床試験を実施することだと考えた。 でもどうしたらいいのだろう? 具体的な取り組みの方向が見えず悶々としていた22年7月、間を置かずして、二つの朗報が飛び込んできた。 一つはあるジャーナリストからのもので、「がん共存療法」で使用しているメトホルミンが、同年6月から国立がん研究センター中央病院で、悪性脳腫瘍である膠芽腫(こうがしゅ)に対する臨床試験に使われているとの情報。もう一つが拙著をお読みになった日本財団の笹川陽平会長からの「この取り組みは大切なことだと思う。もし条件が整えば日本財団が助成することも可能である。頑張りなさい」とのエールだった。 この二つの朗報を持って、私は、以前ホスピス医として勤務していた東京都小金井市にある聖ヨハネ会桜町病院の小林宗光院長(現・名誉院長)に会いに行った。そして、同病院で「がん共存療法」の臨床試験(医師主導型の自主臨床試験)ができないだろうかと直訴した。 結果として、同病院の、ホスピス科部長の三枝好幸医師と、呼吸器内科部長の楠本洋医師(現「新横浜ヒロクリニック訪問診療」院長)が、同院の「生命倫理委員会」に提出する「『がん共存療法』臨床試験に関する倫理審査申請書」の共同提案者に名を連ねてくれたのだ。 9月半ば、参加条件など幾つかの修正の後に、臨床試験は「生命倫理委員会」の承認を得ることができた。10月下旬、日本財団へ、桜町病院の母体である社会福祉法人聖ヨハネ会として助成金申請を行い、12月初めに承認された。23年1月、念願の「臨床試験」は、ついに始まることになった。肺転移が判明してから3年8か月がたとうとしていた。そしてその時、私の体調は良好であり、転移病巣は縮小状態を維持したままだった。