博多っ子の食卓を支え続けて90年超 国際線で空も飛んだ「おきゅうと」とは?
「本当に当時はたまらんかったね」と振り返るが、「おきゅうとは博多にしかない食べ物。作っている店も減って希少だからこそ頑張らないと。『博多はおきゅうとたい』と広く知ってほしい」と話す。 昔は朝食が主流だったが、今は夜ご飯の“おかず”の一品にする家庭が多い。そんな美木子さんおすすめの食べ方は、「缶詰のツナをのせて、しょう油をかけるとご飯のおかず。子どもたちも大好き。私たちは酒のつまみだから、ごまと削り節、しょう油をかけて最後にカボスを絞ると最高」
「一人でも食べてくれる人が増えてほしい」と福岡市内の百貨店や東京都内の博多料理店にも卸している。また、日本航空国際線ビジネスクラスの機内食にも採用されたこともあるという。また、地元でも郷土食の伝統を伝え続ける活動も大切にしている。近所の小学校に招かれ、「郷土食・おきゅうと」について、生徒たちの前で話をする機会もある。製造途中、破れて販売できないものは、「味は同じだから、ぜひおいしく食べて」とデイケア施設に無償で提供もすることも。重くて持ち帰るのがつらいという高齢者には、配達も対応するようにした。 晃弘社長は「博多の郷土料理をとにかくおいしく食べてもらうことが一番。それだけで嬉しい。早起きも頑張れる」と笑顔を見せる。 ――ネギ切ってショウガ、しょう油にカボス……「ちりめんじゃこにしょう油も捨てがたいのよ~。あとワカメと一緒に辛子酢みそもあり。あ~辛子ポン酢も」とビール党という美木子さんの説得力はすごい。たまらず帰り道のスーパーでカボスに手が伸びていた。 (取材・文・写真:秋吉真由美)