45歳を超えてから重くなってきた生理前のPMS。「はい~、腰痛、きた~」やす子のように明るく迎えることにした
世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、40代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第20回は「生理中のおばさん、ダウンして良し」です。。 * * * * * * * ◆10代と40代の生理は違う 某日、某飲み会の前日。何となく予想はあったけど、ややペースが乱れてきた生理がやってきた。 (あ~。来ちゃったか……) カレンダーを見ながら落胆。飲み会はラジオ局と出版社による小規模のビジネス飲み会で、主催者は私だ。参加者の数名は全員男性。それなりに忙しい人たちのスケジュールを調整したので、前日に自分の体調を理由に中止するのも言いづらい。結局、生理中だけは少量にしている酒を飲んで、翌日はぐったりしていた。 昨今、女性の生理をもっと重んじるべきだという風潮がある。10代から生理の重さに苦労してきたので、私もその意見には同意しているはず。なのにいざ自分がその状況に立ったら、自分が生理であるとは言えなかった。仕事に影響があるかもしれないと思うと、つい弱気になってしまった。下請けの身分とはこういう時に辛いと思う。 (私が20代だったら、平気のへっちゃらで飲み会も参加したんだろうな……) 45歳を超えてから生理の症状(腰痛、食欲増進、気分のアップダウン、だるさなど)を超えるのがキツくなってきた。そりゃそうだ。生理は1カ月に一回、子宮内膜が血液とともに体外へ排出されること……というシステムは変わらないのに、10代と40代では構える体力が違うのだから。
◆PMS実況中継 30歳で軽度の子宮内膜症が発覚して以降、ピルと加味逍遙散(かみしょうようさん)という漢方薬を服用している。産婦人科へ通院するのは面倒だけど、この2点のおかげで生理の辛さは半減。経血量もナプキン1日1個程度で済むし、おおよその経血スケジュールはズレない。 それが45歳を超えた頃、どうも様子がおかしくなってきた。いわゆるPMS(月経前症候群)と、お年頃による更年期のような症状も併発。その様子を実況中継したい。 まずは生理の1週間前から「今、成長期ですか?」というくらい、無駄に食欲が勃発。食欲の増加はSNSでもよく見かける症状だ。この時期だけ、一人暮らしのエンゲル係数が右肩あがりになってしまう。 (私の1カ月の売り上げもこうなったらいいのに) そう思いながら、昼食後にアイスとおにぎりを追加。食べた後に残るのは後悔の念のみ。食欲は増えているのに、体が溜め込む期間になる生理。加えて手強い便秘もやってくる。 そして面倒なのが、気分のアップダウン。人にもよると思うが、朝から晩まで悲劇のヒロイン化して、余分なことを考えてしまう。普段ならすぐに流すようなことも、脳裏から離れることがない。 (……私、結婚も出産もしないで、人生落ちぼれだよね……。ごめんね、お母さん……) (メールの返信は遅い、言い訳三昧のこいつめ、二度と仕事しない!) 悲劇のヒロインは止まることがない。こういう時は一人でいると心理状態がますます悪化していくので、酒場に出るか、寝る。ちなみに酒場に出かけた帰りは、旺盛な食欲によりコンビニで爆買いも敢行される。 あとはとにかく体がだるく、許されるのならずっと横になっていたい。先月の生理期間はこの症状に加えて、魔の低気圧も重なった。こうなると (体が床に吸い込まれているんじゃないだろうか) と思うほど、眠気が増す。ここまでくると、何もかもあきらめて寝る。すると生理前日を迎えて、腰にちょっとした違和感が起きる。出血のサインだ。最近は若干の痛みを伴うようになってきたので、鎮痛剤も出動する。で、出血が始まると一気に体が楽になる。 「昨日までの私、一体何だったのかしら? は? 結婚? いやだよ、今さら。私の人生を邪魔されたくはないもん。メール返信? 時には遅くもなるよねえ」 ハイジのようにスキップしたくなるほど、心身ともに快適。便秘も解消、食事も美味しい。これもピルを飲んでいるからなのかわからないが、私に至っての経過。通常は出血してからも大変だと聞くので、本当に生理とは苦行。毎月訪れる滝行だ。 XとY。染色体のちょっとした組み合わせによって、XとXになっただけなのに、毎月病気にかかっているものなのだ。