「極悪女王」Wクラッシュ・ギャルズが見た女子プロレスの光と闇
組織への反骨精神…今だから言えること
Q:改めて、「極悪女王」で最もアツいシーンは?
長与:わたしたちは昭和55年に入門したんです。当時は松永兄弟いわく「はずれ」と言われていた世代。相方も、(ビューティ・ペアの)ジャッキー佐藤さんという大先輩がいらっしゃったために、会社にその跡を継ぐように言われていた。本当は、彼女は彼女でありたかったんだと思う。でも会社に決められてその道を必死に進んでいくしかなかった。そんななか、最後のシーンで相方が“自分たちにしかできないプロレスをやろう”と言ったのは、半分は会社に対しての反抗だったように思う。そこで55年組が一つになれた気がした。「うちらってはずれじゃなかったよね」と対話できたような瞬間。そこをぜひ見て欲しいです。
飛鳥:本当にあのシーンは印象的だったね。あとは、クラッシュ・ギャルズになる前の千種とのシングルマッチ。あのときはお互いに何かを変えたかったという気持ちで試合をしていたんです。会社に反抗した試合。あの試合はクラッシュ・ギャルズ結成のきっかけにもなったので、その意味でもすごく印象に残っています。
長与:女子プロレスというのは余興で始まった興行。それが徐々にマッハ文朱さんやビューティ・ペアさんら偉大な先輩がいて、わたしたち55年組のクラッシュ・ギャルズ、極悪同盟も加わって……という歴史があるのですが、これまで誰もここまでディープなところまでは探ろうとしなかったし、触れなかった。でもこのドラマで、皆さんが死に物狂いで演じてくれた。本当に撮影までの2年間、みんなプロだった。感謝しかないです。
長与千種、ライオネス飛鳥という時代を彩ったスーパースターを前に「今が一番緊張しています」と圧倒されていた唐田えりかと剛力彩芽。彼女たちの人生を生きて、その強さと弱さを身体の内側にしみ込ませたことにより、演じるということ以上のものを体現した。そんな二人に惜しみない称賛を贈る長与と飛鳥。長与は「普通の人がたどり着けない場所に立った」「人よりもたくさん泣いている」とも語っていたが、スターでありながらも人間味あふれるからこそ、当時多くの人たちが彼女たちに熱狂したのだろう。