「ふさわしい身だしなみが分からない」「休日がうまく使えない」…発達障害の人の就労支援は「生活」の見直しが必須
発達障害の人への就労支援が年々、広がりをみせています。 発達障害の人の場合、知識や技術をいかして就職することはできても、人間関係などに悩んで職場になじめず、結果として、退職してしまうことがあります。そのような問題を防ぐために、職場定着までをみすえて支援するケースが増えています。 【前編】健康管理や身だしなみなどの「生活改善」が「職場定着」につながる 就労支援にはさまざまな形式がありますが、基本的な内容や流れは共通しています。『発達障害の人の「就労支援」がわかる本』では、就職活動から職場への定着、生活面まで就労支援のしくみと活用の仕方をイラスト図解。就労支援を利用する当事者はもちろん、その当事者を受け入れる企業側にも好評なロングセラー書から、一部を連載形式でご紹介します。 前編にひき続き、「生活改善」について解説。
身だしなみなど、苦手なことは家族に相談
時間やお金と同様に、身だしなみも計画を立てて「構造化」すれば、管理しやすくなります。しかし身だしなみには時間やお金のようにわかりやすい数値目標がないため、判断に迷うこともあります。支援者や家族に相談して、協力を得ましょう。 身だしなみには数値目標はありませんが、支援者や家族とこまめに相談して、適切な状態や方法を少しずつ身につけていくと、一般常識から大きくはずれることは減ります。 (1)支援者に相談する 仕事にふさわしい身だしなみやふるまいなどを支援者に相談。基本的な注意点を教えてもらっておく (2)家族にも相談する 身だしなみについては、日々の生活で小さな疑問が生じることもある。家族にも相談できるようにしておきたい (3)本人に基準ができる 髪型や服装、持ち物などについて、一定の基準ができる。基準を守る意識をもてるようになる (4)職場にも適応できる 日常生活だけでなく、職場でのさまざまな行動にも、基準がいきてくる。共用スペースをきれいに使えるようになったりする
休日に生活リズムが崩れないようにする
発達障害の人のなかには、休日の自由時間をうまく使えない人がいます。遊びすぎてしまったり、反対に遊べなくてストレスを抱えたりするのです。休日の予定を立て、見通しをもつことも、ひとつのライフスキルといえます。 休日に趣味などのやりたいこと、掃除などのやるべきことを計画的にこなせるようになると、生活リズムが安定します。遅刻や欠勤が減り、職場定着の可能性が大きくなります。 (1)遊びや家事の予定を立てる 休日にすることを事前に計画し、予定を立てておく。遊びだけでなく、掃除や運動、散髪、公共料金の支払いなど、生活に必要なことも組みこむ (2)1週間の生活リズムが安定する 仕事がある日と休日、それぞれの見通しが立てば、1週間の生活リズムが安定する (3)休み明けの遅刻・欠勤が減る 休日に生活リズムが崩れて、休み明けに遅刻・欠勤するという問題が減る。仕事のパフォーマンスが安定する
梅永 雄二(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)