開業は早くても10年遅れの2037年!? リニア新幹線建設の悲惨な現状!!
東京~大阪間を約1時間で結ぶといわれているリニア中央新幹線。2011年に整備計画が決定され、2027年の先行(東京~名古屋)開業が目指されていたが、いまだ計画は難航中。去年、正式に開業の延期が発表されたが、その実態はまさかの「10年遅れ」だという。リニア中間駅では27年に向けた再開発と住宅の立ち退きが進められているが、徒労に終わりかねない......!? 【図1】リニア新幹線の代表的な工事の遅れ * * * ■お門違いの静岡バッシング 2023年12月14日。東京(品川駅)から名古屋までのリニア中央新幹線(以下、リニア)の27年開業を目指していたJR東海は、開業予定を「27年以降」に変更すると公表した。しかし、リニア開業が27年に間に合わないことは、リニア計画と対峙する市民団体の間では何年も前から周知の事実だった。 筆者も数年前からJR東海が公表する各工区の工程表と実際の進捗を比較する簡単な調査をしているが、リニアが通過する1都6県(東京、神奈川、山梨、静岡、長野、岐阜、愛知)のすべてで工事は大幅に遅れている。開業は早くても10年は遅れるだろう。 ところが、JR東海はこうした他都県での工事の遅れには一切触れず、「静岡県が本線工事の着工許可を出さない」と強調し、開業の遅れを静岡県のせいにし続けている。 ほとんどのメディアもそれに倣った報道を展開し、ネットの世界や一部の著名人からは「静岡はリニア完成の邪魔をしている」「川勝平太知事はJRにいちゃもんをつけている」といった、お門違いの静岡バッシングが起きている。 今年の2月29日、市民団体「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」(以下、住民ネット)が山梨県庁で記者会見を開催。筆者の調査データも用いて、「リニア工事は全都県で遅れている」と訴えた。 川村晃生共同代表は「工事の遅れは珍しいことではない。だが問題は、JR東海がそれを『静岡悪者論』に利用することだ」と強調した。なぜ静岡県ばかりが悪者になるのか。 そもそもの発端は13年9月。品川から名古屋までの環境アセスメント(土地開発などによる環境への影響の調査)を終えたJR東海は、その報告書である「環境影響評価準備書」(以下、準備書)を公表。 その内容に川勝知事や大井川の水を水源とする島田市など8市2町は驚く。「南アルプスでのトンネル工事で大井川の流量が毎秒2t減少する」と明記されていたからだ。これは8市2町62万人分に割り当てられた水量に相当する。 静岡県はリニア推進の立場だが、川勝知事は失われるトンネル湧水の「全量戻し」と、その方策を対話する協議体にJR東海も参画せよとの知事意見を出す。そして14年4月に県、JR東海、有識者が話し合う「静岡県中央新幹線環境保全連絡会議」(以下、連絡会議)が発足。 以後、連絡会議では、全量戻しの方法、生態系の保全、建設発生土の盛り土の安全性について話し合うが、10年がたつ今も「トンネル湧水を導水路トンネルで大井川に放流する」「発電ダムの取水制限をする」などの方向性は打ち出されても、JR東海は県が納得するだけの具体策を詰めていない。川勝知事が本線工事にゴーサインを出せないのはこれが理由なのだ。