開業は早くても10年遅れの2037年!? リニア新幹線建設の悲惨な現状!!
■〝静岡以外〟での工事の遅れ 20年6月26日、JR東海の金子慎社長(当時)が静岡県庁で川勝知事に「6月中に着工許可をいただければ27年開業に間に合う」と要請した。 当時から24年3月現在までの期間がそのまま静岡での工事遅れと見なせるので、遅れは約3年9ヵ月と計算できる。だが、リニア沿線には3年9ヵ月をはるかにしのぐ遅れが発生している工区が多数ある。 例えば、神奈川県相模原市に建設予定の「リニア車両基地」は工期11年の計画だが、用地買収が未完で未着工だ。今年着工しても完成は35年。加えて、鉄道施設は完成後も電気調整試験や車両の走行実験に約2年をかけるから(本稿ではこの工程を便宜上「工期A」と呼ぶ)、開業は37年。実に10年遅れとなる。これを含む、工事の遅れている代表的な工区の一部を図1にまとめた。 20年夏。筆者はJR東海の宇野護副社長に会う機会を得て、工事の遅れの具体例を挙げ「27年に間に合うのか」と質問した。宇野副社長は「どの現場も27年を目指している」と答えるだけだった。 次に筆者は実際の工事の進捗率を調べた。すると、本線トンネル区間に限れば、その進捗率は10%台に過ぎないと推計できた。 リニア本線ルートは全長約286㎞。完成している山梨リニア実験線(約43㎞)を除けば、建設中の区間は約243㎞。このうちトンネル区間は約211㎞で、着工されたトンネルの工区は約68㎞に過ぎず、ほとんどで工事中だ。その半分まで工事が進んでいると仮定しても、本線トンネルの進捗率は34÷211=約16%となる。 243㎞のうち32㎞の地上区間も無視できない。住民ネットの資料では、山梨県で完成した橋脚(線路の橋を支える土台)は22本あるが、未着工の橋脚は600本以上だ(推計)。橋脚は3本1組で2~3年の工期が必要である以上、今後の工事体制にもよるが、いつの完成になるのか予想すらできない。 ■なんのための立ち退きなのか? リニア中間駅は、神奈川県相模原市、山梨県甲府市、長野県飯田市、そして岐阜県中津川市に設置される。神奈川県を例に挙げれば、県はJR東海の「1時間に1本」という仮定を無視して、「リニアは相模原に1時間に5本停車する」と想定し、「1日に約3万8000人が乗降し、経済波及効果は年3200億円」と試算している。 こうした試算を受けて、どの県も市も27年開業に合わせ、多額の税金を投入してリニア駅周辺開発(駅前広場整備やアクセス道路新設、道路拡幅など)を計画している。だが「27年以降」開業ならば、27年にはリニア中間駅には閑古鳥が鳴くことになる。筆者は神奈川県の県土整備局都市部交通企画課に電話した。 ――JR東海から「27年以降」が何年かの報告は? 「ないです」