来日27年、新小岩・貴州火鍋の看板店長が「中国の人もお腹を壊す辛さ」にこだわる理由
麻婆豆腐や青椒肉絲など、今や中華料理は日々の食卓に欠かせない存在。 だが中国は広い。我々の知らない料理はまだまだある。 ▶︎すべての写真を見る そんな料理を求めて今回訪れたのは、貴州出身の店主・林 敏(リン ミン)さんが腕をふるう新小岩の「貴州火鍋」だ。
貴州の家庭料理を出す「貴州火鍋」
リンさんが来日したのは、1997年。深圳(シンセン・中国の4大都市のひとつ)で出会った日本人男性との結婚がきっかけだった。 「彼は長男だったから、義理のお母さんと同居したんだけど、そりが合わなくてね。離婚しちゃったの。でも、スポーツジムで今の主人と出会って。日本に来ていちばん良かったことは主人と出会えたこと。今は地元の貴州よりも日本が大好きだよ」(リンさん、以下同)。
そんなリンさんがお店を始めたのは2019年。それ以前は福建省出身の知人にお店を任せていたという。 「その人が中国に帰るから、お店を返したいって言われて。じゃあ、自分たちでできるお店ってなんだろうと思って、慣れ親しんだ貴州の家庭料理を出すことにしたの」。 日本でも珍しい貴州料理は話題となり、テレビなどでも取り上げられた。ふるさとの味を求めて、在日の貴州人も訪れるという。 「お店をやるまで知らなかったけど、今は私のまわりだけでも400人ぐらいの貴州人が日本にいるよ」。
「中国でいちばん辛い」なぜ、そこまで辛いのか?
中国には「四川人不怕辣、湖南人辣不怕、貴州人怕不辣」という言葉がある。 「四川人は辛さを恐れず、湖南人は辛くても恐れず、貴州人は辛くないことを恐れる」という意味だ。つまり、それだけ貴州料理は辛いのだ。 リンさんも「中国でいちばん辛いのが、貴州料理」と笑う。では、なぜそんなに貴州料理は辛いのか。 「貴州は盆地だから湿気が多い。普通にしてると汗をかかないんだけど、それだと体に良くないでしょ。汗をかくために唐辛子をたくさん食べるの」。 貴州料理は、本場の貴州人ですら汗をかくほど、辛い。その中でもリンさんの故郷である、遵義(ジュンギ)の唐辛子の辛さは別格だという。