中国の固体電池ベンチャー・太藍新能源、長安汽車系VCから資金調達 大規模量産間近
半固体電池や全固体電池の研究開発を手がける「太藍新能源(Talent New Energy)」がこのほど、シリーズBで数億元(数十億~百十数億円)を調達した。出資には、長安汽車傘下の安和基金や、兵器装備集団(CSGC)の傘下にある複数のファンドが参加した。今回の資金調達によって、同社は生産ラインのいち早い稼働が可能になったうえ、自動車メーカーの出資を受け入れたことで、電池製品の販売先も確保することとなった。 太藍新能源は2018年に設立され、新しいタイプの固体電池やリチウムイオン電池材料の開発と量産に注力する。同社の研究開発チームのコアメンバーは、11年から固体電池の技術開発に携わっている。固体電池の主要材料や先進的な電池セル、製法、熱管理などに関する技術を蓄積しており、累計で500件あまりの特許を出願したという。これまでに5度の資金調達を実施しており、株主にはレノボ系列の君聯資本(Legend Capital)、両江資本(Liangjiang Capital)、中金資本(CICC Capital)、招商局創投(China Merchants Venture)、国鼎資本(Guoding Capital)、正奇能科集団(ZQET Group)などが名を連ねる。 固体電池には酸化物系固体電解質のイオン伝導率の低さや固体-固体界面の形成といった技術的な課題があるが、同社は導電性を高める複合材料技術やサブミクロンレベルの成膜技術、界面活性化技術を独自に開発した。 李彦CEOによると、第一世代の半固体電池に含まれる液体電解質は5~10%だったが、第二世代の準固体電池では5%未満に減少し、第三世代の全固体電池は液体電解質が全く含まれない。 一般的な半固体電池は製造コストがかさむが、同社のチームは開発の初期段階から迅速な量産化を目指し、厳しくコストを管理してきた。李CEOは、同社の半固体電池生産ラインでは、工程の80%以上にリチウムイオン電池の製造技術を使っているため、製造コストをリチウムイオン電池と同等もしくはそれ以下の水準に抑えられると説明した。 電池技術の革新は、新エネルギー車の普及を促進するカギとなる。新エネルギー車の安全性、航続距離、充電効率などに対して消費者の求めるレベルが高まる中、液体電解質を使う従来型の電池が技術的なボトルネックとなっており、将来性のある固体電池技術の開発が期待されている。 固体電池市場は今年に入って再び過熱した。智己汽車(IM Motors)が固体電池の車載を進めると発表し、広気埃安(AION)もEVブランド・昊鉑(HYPTEC)に全固体電池を搭載する計画を明らかにしている。太藍新能源も大きな飛躍を遂げており、4C超急速充電用の半固体電池や、エネルギー密度が720Wh/kgと高く、容量が120Ahに上る車載クラスの全固体リチウム金属電池を世界で初めて開発したという。 長安汽車が太藍新能源に出資したことで、中国で自動車メーカーと固体電池メーカーの提携は、上海汽車(SAIC)と清陶能源(Qintao Energy Development)、蔚来汽車(NIO)と衛藍新能源(WELION New Energy)に続く、3つ目のケースとなった。これは、中国の自動車産業において固体電池技術の活用が加速していることを示す。 太藍新能源は、大規模量産間近のところまできている。重慶市にある生産拠点では、0.2ギガワット時(GWh)の生産ラインがほぼフル稼働になっているという。建設中の12GWh生産ラインは年内に操業を開始する予定で、生産高は年間100億元(約2100億円)を超える見込みだ。 *1元=約21円で計算しています。