9年前のミラノ万博を席捲した「日本館」 大盛況のフードコートでイタリア人が「最高」と評した意外な日本食とは
フードコートが大賑わい
こうしてひと通り展示を観終った入館者を、レストランが待ち構えている。京懐石の美濃吉のほか、フードコートと呼ばれるエリアに、CoCo壱番屋、サガミ、京樽、人形町今半の4軒が連なっていた。その脇にイベント広場がある。 「農水省は20年までに、日本の農林水産物の輸出を現在の6000億円から1兆円に増やす目標です。それには、食に関して保守的なヨーロッパにも、日本の食材を売り込む必要があります。その点、この万博では日本の食材について、多くの特例が認められ、よい前例になっています」 そう語る加藤政府代表が具体例として挙げるのは、 「日本の和牛は4カ所の屠場のものしかヨーロッパに輸出できなかったのが、美濃吉のステーキに、それ以外の産地の肉を使うことが認められた。イベント広場でも、禁止されていた日本産の鰹節が使えています」 広報の尾高氏によれば、山口県のイベントでは、イタリアでは「毒魚」として禁じられているフグの調理が認められたという。
「天ぷらそばがすばらしかった」
また、フードコートは大賑わい。座席数は160だが、1日のレジ数は2500~4000だという。 「驚異的な数字です。各店は客の需要をとらえるプロ中のプロばかりで、彼らが今後、ヨーロッパで和食を展開すると、広がりのスピードが変わってくる」 と、加藤政府代表は期待を寄せる。再び入館者に尋ねてみよう。 「10代の娘が日本文化好きで、どうしても見たいというからわざわざ来て、6時間待ったけど、娘が満足しているからよかった。でも、私は日本館よりここで食べた和食に満足。天ぷらそばがすばらしかった」(シチリア島から来た40代の女性) 「前回はお寿司、今回は天ぷらそばを食べたけど、天ぷらそばは最高だ」(ミラノから来た20代と30代のカップル) 2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを契機とし、ミラノ万博で弾みのついた和食ブームをどう活かせるか、それが今後の日本の課題となるだろう。 *** 第1回【大阪万博が盛り上がらなくても9年前は…ミラノ万博の「日本館」が“行列9時間の超人気パビリオン”になった納得の理由】では、開会当初も会場内では工事が続き、閑古鳥が鳴いていたという当時の状況や、ほどなくして日本館に人だかりができ始めたという証言などを伝えている。 デイリー新潮編集部
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