9年前のミラノ万博を席捲した「日本館」 大盛況のフードコートでイタリア人が「最高」と評した意外な日本食とは
寿司やラーメンだけが日本ではない
そして最後が、第5シーン「ライブ・パフォーマンス・シアター」。ダイニングテーブル風の客席に着席して、男女2人が先導する15分ほどのショーを見ながら、箸を手に取って、テーブル上に次々と現れる映像の懐石料理を味わうのだ。 「イタリア人は和食に、寿司やラーメンなど単品のイメージを抱いている人が多く、“コースの料理があるんだ”と驚く方もいます。生魚ばかり食べていると思っている人が“日本では肉も魚も野菜もバランスよく食べているんだ”と驚かれることもありますね」(前出の20代女性アテンダント) アテンダントの数も日本人だけで100人超、イタリア人を含めると200人超と、全パビリオン中で圧倒的な数だとか。それが滝川クリステルのあの言葉につながっているそうで、「日本館」の陳列区域政府代表を務める加藤辰也氏は、「日本の“おもてなし”で快適にお迎えしている」と強調すると同時に、 「イタリアにはテーマパークがあまりないから、期待値を含めて興味を持たれているのではないか」 と語る。たしかに、展示中心の他パビリオンにくらべ、日本館はアナログと最新のテクノロジーがうまく組み合わされ、テーマパークに通じる演出が施されているのは間違いない。
「そんなに待つなら日本へ行くよ」
だが、入館者は本当に満足しているのか。何人かに声をかけてみた。ミラノ市内から来て、入館をあきらめたという30代の男性は、 「5、6時間も待つなんてクレージーだ。そんなに待つなら日本へ行くよ」 と言い、サルデーニャ島のカリアリから来たという10代の女性も、 「6時間待ちなんて人生で初めて。日本のアニメが好きだから見に来たのに、全然なくてがっかり」 という感想だが、中部イタリアのリヴォルノから来た20代のカップルは、 「インターネット上でみんなが、“日本館が一番美しい”とコメントしているので来ました。4時間半待ちは人生で最長だけど、もともと好きだった和食がもっと好きになりました」 中部イタリアのマルケ州から来た20代男性も、 「すでに観た友人から勧められて来て、3時間半待った価値はあった。前から日本が好きだったけれど、食べ物のことは知らなかったから、勉強になりました」 日本の食をPRできたようだ。もっとも、20代と30代のアフガニスタン人のカップルのように、 「友人たちから日本館が一番いいと言われ、待ってでも入って、待った価値もあったけど、和食はあまりおいしそうに見えないから、食べたいと思わない」 という例や、高齢者と障碍者、子ども連れの入館方法に不満の声もあったが、イタリアの最有力紙「コリエーレ・デッラ・セーラ」が8月に行った人気投票では、「万博を観たあとで訪れたい国」として日本を挙げた人が最も多かったから、総体としては成功と言えるのだろう。