「このままでは手遅れになる」過疎地の限界は人口4千人、高齢化率45% 分析した官僚が故郷の町長になって7年ぶり人口増、何をした?
それを実現するための手段がデジタルだ。狙いをこう解説する。 「財源や人手に乏しい中山間地の小規模自治体でも、町内から遠方の人まで幅広くコミュニケーションをとることができる。SNSのアカウントやメールアドレスとつながることで、相手の関心に沿った効果的な告知も可能になる」 中でも、利用者が多いLINEにまず目を付けた。「オープンチャット」と呼ばれる機能を利用すれば、町内外の誰でもチャットグループのメンバーになり、全員に向けたメッセージを送ることができる。メンバーが知人や出会った人をグループに誘ったり、町のSNSで参加を呼びかけたりして、メンバーを増やす狙いだ。 チャットで告知する内容は、観光PRから、町内外のイベントに参加した際の写真や感想まで多種多様。町外の人からもさまざまな投稿が寄せられる。町長となった菅野さんも頻繁に投稿し、メンバーと直接、意思疎通をする。 メンバーは次第に増えていった。ことし9月20日現在で1400人超となり、手応えを感じている。「町内外との活発なコミュニケーションができている。町在住の利用者も相当数いるため、町民ニーズの把握にも役立っている」
▽「デジタル住民票」をネット販売。13倍超の抽選に 今年4月には、新たにユニークな取り組みを始めた。「デジタル住民票」だ。 町の事業だが、公的な住民票ではなく「西川ファンの証し」という位置づけ。価格は千円で、町内外の誰でもデジタル住民となれる。町長とネット上の仮想空間「メタバース」上で意見交換できるほか、町外の「住民」は町の温泉が入浴無料になる。デジタル住民票の作成では企業と連携して「非代替性トークン(NFT)」と呼ばれる技術を使った。 NFTは、複製不能のデジタルデータを指す。近年は町おこしでの活用が広がっているが、菅野さんによると、自治体が公式に販売するのは全国初という。 当初は1千個限定の抽選販売だったが、話題を呼び、販売開始から1分で発行数を超える申し込みがあり、最終的には1万3440人に上った。 「町民の約3倍の人たちが感心を持ってくれたことになる」 9月には、町内の公園の命名権を付与するNFTアートのネットオークションも開催。すると、「想定以上」と町職員も驚く130万円で落札された。