「このままでは手遅れになる」過疎地の限界は人口4千人、高齢化率45% 分析した官僚が故郷の町長になって7年ぶり人口増、何をした?
▽人手不足はAIでカバー 町長の地方創生策はまだ終わらない。 町の人手不足をAIでカバーする取り組みにも力を入れ、観光振興の一環として、4月から「AI謎解きゲーム」を実施している。地元の山岳信仰をモチーフにしたストーリーに従い、AIと対話しながら謎を解く内容だ。町内を周遊しながら魅力を体感してもらい、人手をかけずに西川ファンを増やす狙いがある。 町民生活向上のためのアプリも企業と開発している。AIが生活相談を受けたり、お年寄りの話し相手になったりすることができる。方言にも対応しようと、今年7月には地元の言葉をAIに教える町民らをオーディションで募集。40~80代の男女計5人が選ばれた。 アプリを搭載したタブレット端末は、2024年3月末までに町内の全戸に配布する予定だ。 ▽財源は国の制度をフル活用。できるだけ交付金で賄う 菅野さんはこれらの取り組みを、デジタル事業の「スタートアップ」と評する。一部には「そんな事業に多くの予算を使うのか」と懐疑的な声もあるが、菅野さんは「財源は国の交付金なども使って確保している」と説明する。
たとえばAI謎解きゲームは、事業費2千万円のうち1千万円が政府の「デジタル田園都市国家構想交付金」。残りの1千万円も「企業版ふるさと納税」制度で得た寄付金を利用した。 町長就任以降、申請が通ったデジタル田園都市国家構想交付金は計約9億5千万円に上る。2023年度はデジタル関連事業費計9億2586万円の約57%に当たる5億2958万円を同交付金で賄うという。 「国の制度を積極活用するべきだ。政府の交付金は自治体間のアイデア勝負で交付先が決まるものもある。小さな町でも、創意工夫次第で財源を調達できる」。政府で補助金行政に携わった経験が生きている。 ▽「リスクを恐れない挑戦」が最大の策 今年9月1日時点の西川町は人口4696人、高齢化率は47・3%。8月に策定した2030年度までの総合計画では、現在のペースで減少が続いた場合、2030年4月1日には人口が4085人になると推計した。「ボーダーライン」の4千人が目前に迫る。
目標は「8年以内の生産年齢人口増加」。そのために「できるだけ早く減少傾向から増加に転じさせる」。それだけに、わずかでも人口が増えたことは素直にうれしい。 9月現在、町の「関係人口」は約1万3800人になった。町長就任からの1年半で西川ファンは着実に増えている。菅野さんの挑戦は今後も続く。「経営感覚を持ち、リスクを恐れずにチャレンジを続けていく。挑戦が最大の人口減少対策になると信じている」 動画もどうぞ→【町長語る】最大の人口減少対策は「挑戦」その訳は