「このままでは手遅れになる」過疎地の限界は人口4千人、高齢化率45% 分析した官僚が故郷の町長になって7年ぶり人口増、何をした?
▽「あと10年が正念場」 2021年から内閣官房に入り、「まち・ひと・しごと創生本部」や、岸田文雄首相肝いりの「デジタル田園都市国家構想」の事務局に所属。政府交付金を受ける自治体の審査などを担当し、地方創生の成功例も失敗例も見てきた。そんな時、「地方創生の限界を調べてほしい」という調査を請け負った。 さまざまな自治体の事例や統計を調べた結果、こうなった。「人口が4千人以下となり、うち65歳以上が45%を超えると、その自治体は生産年齢人口(15~64歳の人口)を増やすことがほぼ不可能になる」 自分たちが導いた答えにショックを受けた菅野さん。「このままでは故郷は手遅れになる。あと10年が生き残れるかどうかの正念場だ。人口減少打開に向けた対策を、今すぐやるしかない」 実は以前から、帰郷時に西川町役場の職員らと意見交換をしていた。ただ、町役場の腰は重い。「活性化のアイデアはあっても、実施するための補助金申請はしてこなかった。どうしたら事業化できるのか分からない様子で、挑戦する機運も乏しかった」
一方で、自分には地方創生や補助金行政の経験がある。「どうすれば…」そんな時、偶然にも地元の政党関係者から声を掛けられた。「町長選に出てみないか」 公務員という安定した職を失うため周囲は反対したが、思い切って出馬。選挙戦に勝ち、2022年4月、町長に就任した。 ▽LINEを通じて1400人と交流 菅野さんが温めていた考えはこうだ。「一気に人口増加に転じさせるのは難しい。まずは西川町のファン、つまり『関係人口』を増やさなければならない」 関係人口とは、大都市など町の外に住みながら、観光や仕事などさまざまなきっかけで継続的に町と関わってくれる人のことだ。ふるさと納税をしてくれる人、観光のリピーターになってくれる人、仕事を通じて町と関わってくれる人…。 こうした人からニーズやアイデアを吸い上げ、町の知名度や魅力を高めることで、観光振興や財源確保、ひいては移住の増加につなげるという青写真を描いた。