井上ひさし原案の舞台『木の上の軍隊』堤真一&山田裕貴のW主演で実写映画化
2010年4月に75歳で亡くなった作家・井上ひさしさんが生前やりたい事として記していた原案を基に、こまつ座で上演され人気を博した舞台『木の上の軍隊』を、俳優の堤真一、山田裕貴のダブル主演で映画化。終戦80年となる来年(2025年)、6月13日に沖縄先行公開、7月より全国公開されることが決定した。 【画像】ガジュマルの木をメインに写したティザービジュアル 太平洋戦争末期、日本でし烈な地上戦が繰り広げられた沖縄で、終戦を知らずに2年間、ガジュマルの木の上で生き抜いた日本兵2人の実話を基にした物語。全編を沖縄で撮影、沖縄出身の平一紘が監督を務める。 1945年太平洋戦争末期――沖縄・伊江島で日本軍は米軍との激しい交戦の末に壊滅的な打撃を受けていた。宮崎から派兵された上官・山下一雄(堤真一)、地元沖縄出身の新兵・安慶名(あげな)セイジュン(山田)は敵の激しい銃撃に追い詰められ森の中に逃げ込み、大きなガジュマルの木の上へ登り身を潜める。 太い枝に葉が生い茂るガジュマルの木はうってつけの隠れ場所となったが、木の下には仲間の死体が増え続け、敵軍陣地は日に日に拡大し近づいてくる。連絡手段もなく、援軍が現れるまで耐えしのごうと彼らは終戦を知らぬまま2年もの間、木の上で“孤独な戦争”を続けていた。やがて極限状態に陥った2人は…。 堤は、戦争下の厳しく恐ろしい上官・山下が木の上の生活で変わっていく様を、悲惨さの中にユーモアを交えて演じた。山田は沖縄で育ち、一度も島から出たことがない純朴な新兵・安慶名を演じ、彼を通して観客は沖縄戦を体感することになる。 初共演となった堤と山田は、「難しい役だといろいろ考えていたけれど、真っ直ぐな安慶名そのものの山田くんのおかげで2人だからこそ生まれたものをそのままやっていけばいいんだと思えた」(堤)、「堤さんの実在する力がすごく、お芝居せずに反応できる、役を生きるということができた」(山田)と、互いに語っている。 平監督は、原作のモデルとなった実在の日本兵と同年代。本作の映画化にあたり「僕は、沖縄で生まれ育ち沖縄戦についてたくさん知っているつもりでした。しかし、この映画を撮る為にあらゆる角度で取材し、あの戦争を見つめた時『木の上の軍隊』で皆さまに見せたい景色が見えてきました。沖縄で撮ったということ。伊江島で撮ったということ。生きた樹で撮影したこと。それらは全てスクリーン上で皆さまに肉迫するでしょう。本当に起きた事の恐ろしさと、素晴らしさをご覧いただきたいです」と想いを語っている。 沖縄在住のスタッフを中心に組まれた制作陣と共に、全編沖縄にて撮影、木の上のシーンは実話と同じく伊江島で、実際に生えているガジュマルの木を活用し撮影を敢行した。太平洋戦争終結から80年を迎える2025年。当時を語れる戦争体験者がいなくなっていく時代に向かう中で、語り伝えていかねばならない沖縄戦を沖縄発信で伝えていく映画が制作されることに大きな意義がある。 ■堤 真一(山下一雄役)のコメント この作品は、ただ戦争はいけないということだけでなく、戦争によって変わっていく人間の価値観や、今の時代にも通じるその時代ごとの世代間のギャップなど、いろいろなことが描かれています。 監督が沖縄出身ということもあり、沖縄からの目線で描かれていますが、僕自身もこれまで知らなかったことが多く、この映画を通して実際にこういうことがあったということを知り、学んでいます。今からもう、若い方たちにはもちろん、自分の子どもたちにも見せたいなと思っています。 沖縄が戦争で大きな被害を受けたことは知っていましたが、長い年月が経った今だからこそ、細かいことまでつまびらかにしていかなくてはならない、とあらためて感じました。まだ映画は完成していませんが、題材そのものも含めて、日本だけでなく、まだ争いがおこっている世界中でも観ていただきたいです。 ■山田裕貴(安慶名セイジュン)役のコメント この作品のお話をいただき、脚本を読んだ時、監督が実際にたくさん取材をされ、戦争の悲惨さ凄惨さもしっかり映し出されていたので、僕も含めて戦争を知らない世代の人が増えてきている中、こういう作品を伝える役目をもらえて嬉しかったです。 僕は、戦争真っ只中を生きているわけではないけれど、疑似体験として役を生き、体感していくお芝居の中で、2年間木の上で生き抜いた人がいる、それが出来た人がいるから僕たちにも何かできると、そう感じられるのは、実在した人を生きるということの強みなのかなと思っています。 作品を通して僕も知らなかった沖縄の歴史を知ることができ、こういう時代があったから、今があるのだとあらためて感じることができました。この事実を知ってもらい、この作品がひとつ考えるきっかけになればいいなと思っています。それは日本にとどまらず、世界中の人にも、一人でも多くの方に観てもらえたら幸せです。