「丸亀製麺」なのに香川・丸亀に店舗なし トリドール、うどん作りを学ぶ「心の本店」開業
心の本店では施設前の約990平方メートルの畑で小麦を栽培。製粉して海水を沸騰させて作った塩と水で麺にし、薪たきの釜で麺をゆでる手打ちうどん作りを体験できる。
店内製麺にこだわる丸亀製麺ではスタッフ個々の判断を伴ううどん作りを重視し、技術力向上と教育システムの一環として平成28年に「麺職人」制度を創設。筆記試験や実技試験で判定される。4階級あり、今年9月末時点で全従業員の約5%に当たる1739人の麺職人が誕生しているが、「二つ星」は9人、「三つ星」以上はいない。
心の本店は必要な原材料の調達から1杯のうどんに仕上げるまでの工程を実践する「三つ星」の研修と試験の会場としても活用。さらに「親子うどん作り体験教室などを開き、島の交流人口増加にも貢献していきたい」(木村課長)という。
記念式典では粟田社長らによるうどんの食べ比べが行われた。昆布と混合節の出汁を使った丸亀製麺のかけうどんと、心の本店で作った手打ち麺と特製いりこ出汁のかけうどん。式典後には集まった島民らにもエビ天うどんが振る舞われた。
■「食の感動」体感を
「手作り、できたて」を全面に出して人気を集める丸亀製麺は積極的な海外進出により、今年9月末時点で国内外に1134店を展開し、来年で創業25年を迎える。従業員に「食の感動」という原点を再確認してもらいたいという粟田社長は「心の本店の役割は非常に大きい」と指摘。「うどん作りの原風景や本当の手打ちを体験し、ここで培われる技術と情熱が、讃岐うどんの伝統継承と未来の創造に貢献することを期待している」と力を込める。
丸亀製麺の山口寛社長(43)は「讃岐の地は私たちの憧れの場所。讃岐広島には祖母の家のような懐かしさ、温かみを感じる。尊敬する部分が多く、たくさん学ばせていただきたい」と語る。
丸亀製麺のうどん作りの番人でただ一人の「麺匠」である藤本智美(さとみ)さん(63)は今年度内をめどに島に移住する予定。「私自身も、うどん作りの原点に立ち返れる場所で、新しい刺激をもらった。そうしたうどん作りの心の部分を広めていきたい。温かく迎えてくれる島民に恩返しができれば」と意気込んでいる。(和田基宏)