干上がったアマゾン大丈夫?―流域の乾燥化と熱帯林の減少が地球温暖化を加速する
観光で有名だったピラケカラ湖が消滅
アマゾンの熱帯雨林は、CO2を吸収し、地球温暖化を防止する役割を担ってきた。だが、2021年のブラジル国立宇宙研究所の試算では、アマゾンのCO2の排出量が吸収量を上回るようになったという。これを裏付けるように、降雨量は過去40年間で4分の1近く減少し、平均気温が上がっている。 ブラジル内陸のアマゾナス州の州都マナウスにあるピラケカラ湖はその景観の美しさから観光客が必ず訪れていたが、アマゾン川の水不足で、2023年秋に湖が干上がってしまった。湖の水上住宅で生活していた住民らは移住を余儀なくされ、捨てられた廃屋が湖底に無残な姿をさらしている。 『選択』2023年1月号は、現地の大手紙特派員の声をこう伝えている。「水上交通でつながっていた集落は、渇水で完全に外界から孤立してしまった」。生計を川に頼ってきた沿岸住民らは仕事、交通、通信の手段を失い、さらにアマゾン水系の住民にとって、飲料水であり、生活用水であった川の水が魚の死体や汚水の増加で、飲料水として適さなくなり、健康被害が顕著に起きているという。
水深が1903年以来過去最低になった
どれぐらい干上がっているのか。 マナウス付近で、2023年10月の水深が12.7メートルと、記録のある1903年以降で最も低かった。過去最低だった2010年10月の13.63メートルに比べ、約1メートル下がった。水温も高くなり、マナウス上流のテフェ川(湖)では水温が39度を記録。6キロあった川幅が半分になってしまい、アマゾンイルカが高い水温と酸素の欠乏で大量死したという。
世界最大級の湿地帯「バンタナル」は、一部が世界自然遺産に指定され、1,000種を超える動植物が生息し、貴重な生物多様性を誇っている。2018年から秋から春にかけての雨期の雨量が少なく、毎年水不足に悩まされている。樹木や土地に水分が少ないため、簡単に森林火災が起きているという。
COP28で先住民族相が「これ以上の破壊に耐えられない」
2023年12月、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれた国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)に出席したブラジルの先住民族全国組織の代表を長く務め、初代の大臣となったソニア・グァジャジャラ先住民族相は、「『地球はもはやこれ以上の破壊に耐えられない』との警告に世界は耳を傾けるべきだ」と記者に訴えた。