干上がったアマゾン大丈夫?―流域の乾燥化と熱帯林の減少が地球温暖化を加速する
タパジョス川下流で調査し、 金鉱山の下流で無機水銀が有機化し、毛髪の水銀値が高い人で200ppmを超えていたことがわかった。 原田さんの診察で、3例が軽い水俣病、4例が水俣病の疑いがあった。当時、原田さんは筆者に、金の採掘業者に追いやられた先住民の悲惨な状況を、かつて差別を受け続けた水俣病患者に重ね合わせ、本格調査と救済を訴えた。しかし、この問題は、ブラジル政府がうやむやにしてしまい、原田さんも鬼籍に入り、現在に至っている。 参考:環境省 毛髪の中の水銀(https://www.env.go.jp/chemi/tmms/husigi/hg_husigi_23.pdf)
1年間で9,000~1万平方キロメートルの森林が消失
ところで、国立宇宙研究所によると、22年8月~23年7月のアマゾンの森林の消失面積は、前年同期比22.3%減の9,000平方キロメートル。これまでは1万平方キロメートルを上回っていたが、5年ぶりに1万平方キロメートルを切った。とはいえ、2012年は4,600平方キロメートルだったから、減少が加速していることが、わかる。
2019年以降、アマゾンでの落雷や野焼き、放火による火災の件数は2倍に増え、2020年から2021年にかけて2006年以降最悪の13,000平方キロの森林が失われ、違法伐採業者や金の採掘業者による放火や野焼きはあとを絶たない。
大統領の交代が吉とでるか
そんな状況にもかかわらず、ブラジルでは有効な対策がとられてこなかった。特に、2019年に大統領になったボルソナーロは、開発を優先し、違法伐採を監視してきたブラジル国立宇宙研究所などの機関の権限や予算を縮小し、無法状態となった。 2023年1月、ボルソナーロから政権を奪還し、15年ぶりに大統領に返り咲いた左派のルーラ・ダシルバは「森林破壊ゼロ」を掲げるようになった。だが、アマゾンが大きく救済されたわけではない。 日本は、どんな貢献をすればよいのだろうか。
日本がアマゾン基金に拠出
2024年2月、動きがあった。政府は、アマゾンの保護を目的とし、2009年に発足した「アマゾン基金」に300万ドル(4億1,100万円)の拠出を決めた。2月、ブラジル政府と合意書の署名がブラジルであり、シルバ環境・気候変動相と林禎二駐ブラジル大使、基金を運用する国営ブラジル経済社会開発銀行(BNDES)のバルボサ理事が立ち会い、署名した。 アマゾン基金は、これまで伐採の監視活動などに利用されてきたが、ボルソナーロ政権は19年に運用を停止していた。ルラ大統領が復帰し、運用が再開されていた。 基金は30億レアル(約914億円)。日本のほか、ノルウェー、ドイツ、国営石油会社ペトロブラスも拠出し、スイス、米国も拠出を始めた。さらに、英国、デンマーク、欧州連合(EU)も拠出を表明している。こうした動きをもっとひろめたいものだ。