西日本豪雨で約半数のかんきつ農家が園地失い…爪痕残る「興居島」に学ぶ災害に強い地域づくりとは
興居島で最も標高の高い小富士の山頂付近から、幅およそ15m、縦150mにわたり流れ落ちた土砂は、代々続く田中さんのいよかん園地を飲み込み、園地の下にある倉庫にまで達しました。 田中さん: 「本来やったら山に立ち入らない方がよかったんですけど、まさかとは思ったんですけどね」
11日間という長い期間雨が降り続き、総雨量が400ミリを超えた西日本豪雨と比べ、短時間でまとまった雨が降ったことが分かります。 木村さんは、この短時間に降ったまとまった雨が土砂崩れの要因になったと指摘します。
木村さん: 「興居島は、傾斜地の果樹に丈夫な石垣を築いて昔から果樹栽培をされているというのがわかりますので、災害に強い園地作りというのはずっと努力されている地域だと思うんですよね。ただ雨の量というのが変わってきているので、どうしても防ぎきれない所が出てきてしまうというのが最近の状況じゃないかと」 気象庁は地球温暖化が進んだ場合、県内では1時間50ミリの雨の年間発生回数がおよそ2倍に増加すると予想しています。刻々と変化する気象にどう対応すればいいのか。
農家の知識や経験値を見える化「農業版ハザードマップ」を作成
興居島では起こった災害を未来の防災につなげようと、農家の知識や経験値を見える化した農業版ハザードマップを作成。土砂崩れが発生した場所や耕作放棄地などが記されていて、過去の災害を無駄にしない取り組みが進められています。 田中さん: 「また苗木を植えて作っていって、元の畑に戻るように頑張っていきたい。一歩ずつ進んでいます」
山地などの急傾斜地が多く土砂災害の危険個所は15190か所と、全国平均を上回っている愛媛県。その一方で急傾斜地を利用して、農業や林業が盛んに行われているのも特徴です。 木村さん: 「最近は農林業の従事者が減って、十分管理が行き届かない地域も増えている。そういう近年の土地利用変化が土砂災害の危険性を増している側面もあると思います。これからは増える豪雨に警戒することももちろん、土砂災害が起こりやすくなっている場所がどこにどれぐらいあるのかというのをよく知っておくというのが大事」 土砂災害は山だけで起こるものではありません。たくさんの土砂が水とともに沢沿いを一気に流れてくる土石流のような現象は、土砂が山から扇形に広範囲に流れ出て、平地にも被害をもたらします。
“災害に強い地域づくりをどう進めるか” 木村さん: 「愛媛県は土石流・地すべり・急傾斜地の崩壊すべての土砂災害の危険個所が多い県ということが言えます。災害リスクが高い所として認識しておくことが大事」 田中さん: 「災害に少しでも強い園地になるような努力を地域として考えてやっていけたらと思いながらこの経験を活かしていきたい」