社員の高齢化が進むなか…企業のガバナンス機能を高める「内部監査」に期待が高まるワケ【経営コンサルタントが解説】
情報の「共有化・デジタル化」でグループシナジーを強化
まず、ホールディング会社で共有すべき情報を整理し、これらの情報を各事業会社から集約して共有する仕組みを確立することで、各社間のシナジーを強化した。 具体的には、業績管理情報、仕入・在庫情報、顧客情報、会計情報をホールディング会社の管理部が集約し、経営会議・営業会議で業績対策の情報として活用する。将来的には、事業会社連携によるワンストップソリューションの提案や、グループ一括仕入の実現を目指す。 労務管理情報や人事情報は、ホールディング会社の人事部が集約する。特に超過労働時間の把握は徹底し、改善策の立案のために活用することが決まった。 また、人事情報や労務管理情報は、グループ人材会議で人材育成の企画立案や人材配置に関する情報として活用されることとなった。管理のための人事情報というよりも「人が成長する」ための人事情報に重きを置くことが重要なポイントである。
重要な経営企画機能とガバナンス機能
A社グループではグループ理念がすでに作成されていたため、プロジェクトでの実質的な議論は経営企画機能とガバナンス機能が中心となった。 特に、経営企画機能のなかの「決裁権限」についてのテーマで議論が白熱した。 決裁権限は、当社から(1)時間軸(計画や方針などにおける期間)、(2)影響範囲(施策や規程が及ぼす組織範囲)、(3)事業領域(新規参入や投資をする業種・エリア)、(4)成長方向(施策が組織をどのように成長させるのか)、(5)金額規模(借入金や支出の金額の大きさ)で整理することをアドバイスし、それをプロジェクトメンバーで掘り下げ、結果、新たな決裁権限が策定された。 次に、ガバナンス機能においては、特に内部監査の仕組み化に重点を置いて検討が進められた。内部監査で重視する内容として、以下の3つが挙げられた。 〈内部監査で重視する内容〉 (1)適合性のチェック:経営状態の健全化に向けたリスクマネジメントと、公正かつ独立した立場での業務上の不正防止を目的とした内部監査 (2)有効性のチェック:業務プロセスの効率化と経営目標の効果的な達成に対する内部監査 (3)ノウハウの伝承:持続的に成長していくための体質の醸成と、社内での成功体験の積み上げを目的とした内部監査 特に3つ目の内部監査は、社員の高齢化が進むなかで「ベテラン人材のノウハウ」を社内で伝承させる取り組みとして大いに期待されている。内部監査というと、指摘型のイメージがあるが、A社グループでは「誰もが教え、誰もが教わる組織風土」を大切にしたいとの思いから、この仕組みが取り入れられた。