人生100年時代の必須スキル エイジマネジメント 生涯現役へ個人と企業ができること
読者の皆さんは、何歳まで働くご予定でしょうか? 日本では暦の上の還暦という慣習に加えて、昭和、平成から定年に該当してきたので、働くのは60歳を一区切りと考える傾向が根強いと思います。 他方、少子高齢化の影響で社会保障制度の維持が困難になっていく現実は一個人の力では避けようがありません。令和に入り65歳までの継続雇用を超えて、70歳までの就業機会の確保が事業主の努力義務とされています。有名企業が定年を70歳に引き上げる動きが報道され、今後は70歳を超えて働きつづける未来は確実です。 50歳を迎えると世間的にはシニア層というくくりになる傾向があるように思いますが、単に年金の受給年齢の引き上げというネガティブな見方にとらわれず、自律的にその後の見通しを持っていくことがますます重要になってくるでしょう。そのような時代にこそ、覚えておくと良いのが「エイジマネジメント」というキーワードです。
高齢者差別なくす意識改革へ労使が協調
老化に伴う様々な現象の影響を軽減するアンチエイジング、和訳では「抗加齢」という考え方が浸透し、それを目指す抗加齢医学も進歩、発展しています。実年齢より若く見せること、若々しい肉体を保つことは医療サービスを超えてビジネスの対象にまで広がり、そうしたコマーシャルを目にしない日はありません。 けれども、エイジマネジメントはこれらとは意味合いが異なります。エイジマネジメントを直訳すると「年齢管理」と訳されますが、現代の医療技術では加齢現象を思いのまま管理、コントロールすることはできません。 他方、職場側と働く側の双方が生涯に活躍できるよう意識的に取り組む施策全般に通じる考え方を示すのが、エイジマネジメントという概念です。年代にかかわらず、すべての人は年齢を重ねていきますが、その影響を企業等で労使双方が直視し、その人的資源を保つよう、様々な側面から取り組もうとする考え方がエイジマネジメントなのです。 このエイジマネジメントという考え方は北欧、特にフィンランドで提唱され、発展してきました。その目指すところは単に健康面に留まりません。労使が協調して加齢に対する意識を向上させ、高齢者を見下すような言動や差別をなくすこと、関係者が加齢に対して公正な態度を示すよう協調していくことです。シニアの部下を持つ管理監督者もそうした姿勢を体現し、仕事の能力と生産性を年齢に関係なく向上させ、そのための生涯学習、いわゆるリスキリングにも取り組みます。こうした施策を実現するために企業側はエイジマネジメントを人事施策に位置付け、年齢に応じた働き方と共に退職まで安全かつ尊厳ある移行にも注力することになります。