人生100年時代の必須スキル エイジマネジメント 生涯現役へ個人と企業ができること
仕事する喜びや豊かな人間関係がある職場づくり
実は冒頭の問い掛けの「何歳まで働きますか?」という質問を10年以上にわたって、日々の講演、研修の場で参加者の方々にお尋ねしてきました。60歳、65歳、70歳ないしそれ以上といった選択肢の中からお答え頂いてきましたが、その際に演者、講師として感じるのが、「もう働きたくない」「しんどい思いをしたくない」というネガティブな感情です。その背景にあるのが職場のストレス要因として象徴される増える一方の業務量、上司や顧客からの要求の厳しさ、上意下達の環境下で命令、指示に従い続ける辛さ、自分の気持ちを押さえつけ、周りに合わせるように耐える毎日を終わりにしたいという気持ちです。 翻って、高年齢労働にまつわる主に安全衛生、健康管理を対象とする調査、研究、啓発や執筆、現場への訪問を通じて実感してきたことは、何歳でも働くことは素晴らしいと考えている人が一定数おられること、そのことが健康を保ち、恐らくは寿命を延ばす効果があり、加えて何歳になっても充実した時間を過ごした実感を持つことに役立つということです。 そうした好事例に該当する職場や働く人をテレビ番組でもしばしば取り上げていますが、共通するのが仕事をする喜びや、職場やビジネスを通じた豊かな人間関係があるということです。それはまさに「生涯現役」という言葉で象徴される状態です。 「何歳まで働きますか?」という質問は、「退職して以降は何をして過ごしますか?」という質問につながっていきます。たとえ100歳まで生きたとしても、最後には病気になり、あるいは介護を必要とする毎日が待っています。限りある命を持つ我々はそのことから逃れることはできません。そうしたことを直視し、将来を見据えて目の前にある日常生活、働き方や職場での過ごし方に反映していく心掛けが必要になる、それを日々、継続することができれば生涯現役が実現できる可能性が高まります。
体力や健康状態など労働適応能力チェックを
求められる仕事を遂行できる知識やスキル、それを実践できる状態を支える基礎的な力について、北欧では「Work Ability」、和訳では「労働適応能力」という考え方があり、様々な調査が行われています。 この労働適応能力を主観的に振り返ることができるのが、次の事項です。 ・仕事をこなすために必要な精神的及び肉体的な体力は十分であると思えるか?これまでのピークと比べて、変わりない、遜色ないと思えるか? ・仕事に影響を与えうる持病やけがはあるか?それらにうまく対処、対応できているか?それによる実際の影響はどうか?結果的に仕事を休む日がどれくらいあるか? ・仕事をこなしていく現在の力を今後、どれくらい保つことができるか?それを支える自らの肉体的、精神的そして社会的なウェルビーイングはどのような状態なのか? こうしたポイントを40代、50代、60代と自らの年代に即して、生涯にわたって良好に保つことを意識し続けることが、ご自身の労働適応能力を低下させず、また維持していくことに有効であると思います。