トランプ2.0の人事からわかる「米中戦略的対立」の本気度…識者が危惧する日本企業が被るチャイナリスク
■日本企業の生産拠点はどこへ? アメリカが中国に対してさらに強硬な態度を取るのは避けられない。なぜなら、トランプ1.0で米通商代表部(USTR)の代表を務めたロバート・ライトハイザー氏も、再び重要ポストに就く可能性が高いからだ。 彼は保護貿易主義者であり、中国製品に対する関税を60%まで引き上げるべきだと主張しており、中国に対する経済的圧力を打ち出してきた。狙いは、中産階級の復活と製造業・サプライチェーンの国内回帰である。 この動きに伴い、日本企業も中国への依存を見直さざるを得なくなる。「チャイナリスク」が顕著になる中、日本企業は中国からの生産拠点撤退や縮小を加速させている。帝国データバンクの調査では、中国に拠点を持つ日本企業は約1万3000社で、2012年以降1000社減少しているという。 前出・ナギ教授によると「習近平政権下で約7兆7000億ドル(約1190兆円)もの資本が海外に流出した」という試算もあるという。中国経済の失速、そして若者の失業率が約20%に達するなど中国社会の不安定さは今後さらに際立つかもしれない。 中国経済の行き詰まりや少子高齢化に直面し、国民は中国共産党に対する信頼を失っているとさまざまなメディアやシンクタンクが報じている。ライトハイザー氏の任命は、中国経済にプレッシャーを強める目的と見てもよい。 ■トランプは台湾を守るのか? 「台湾有事は日本有事」と述べたのは故安倍晋三首相だ。トランプ2.0の台湾政策は日本と歩調を合わせると考えられる。 ルビオ上院議員の国務長官指名に加え、国家安全保障担当補佐官にはマイケル・ウォルツ下院議員が指名される予定だ。ウォルツ氏は、中国を「深刻な競争相手であり敵対国」と過去に発言している。前出・佐藤教授は、「ウォルツ氏のインド財界との結びつきが、対中強硬姿勢を支える背景にある」と分析する。 アメリカにとって台湾は重要だ。なぜなら、台湾が中国に統一されれば、アメリカは南シナ海を通過する年間5兆3000億ドル(約819兆円)の貿易支配権を中国に奪われるからだ。さらに、台湾が世界における半導体生産の約60%を占めている点からも、統一はアメリカと日本両方のハイテク企業に深刻な影響を与える。 また、「サハリン諸島から日本列島、台湾、フィリピンまで連なる地政学的位置において、日米の安全保障にとっても同様に大切だから日本とトランプ2.0は継続的に協調していく」と前出・ナギ教授は推測する。 これは日本にとってプラスになる一方で、米中の競争が日中関係にマイナスに働く可能性を生む。何しろ、日中間の貿易総額は、前年より3.8%減ったといえ、2023年には約3007億ドル(42.2兆円)もあり、中国は日本にとって最大の貿易相手国だからだ。 同時に、中国にとっても日本はアメリカに次ぐ、第2の貿易相手国である。日本はアメリカとの同盟を最優先にすると同時に、中国も非常に大事な国だということを忘れてはいけない。