「そうした仕事をしたいと突き詰めて考えていけば、達成できるのは市長という仕事かなと思った」と話す。市職員という選択肢もあったが、「大きなビジョンを掲げて賛同してくれる人を巻き込んでいくという方法があっているのでは」と考えた。

そんな思いの背景には、渡米中の2016年、民主党のヒラリー・クリントン氏と共和党のドナルド・トランプ氏が対決した大統領選がある。学生新聞のカメラマンとして選挙に関わる学生の取材に行った際、学生らの熱量に圧倒された。

「日本では選挙をひとごとととらえる学生が多いけれど、アメリカでは自分たちの国だから、自分たちがよくしなきゃって思いが強い人が多い。すごいと思いましたね」

日本に帰ってきたのは22（令和4）年5月。翌年の統一地方選の後半戦に予定されている芦屋市長選まで1年を切っていた。

「当然意識していた」と話す市長選への立候補だが、家族に立候補の意志を伝えたのは8月のある日の深夜。

「高島家では重大事を決めるときに家族会議を開くんですよ。私の中学受験も、大学入学もそうでした。そこで家族からの疑問に答えられないと『出直してこい』となる」と笑う。

その家族会議で、兄の立候補の意志をことのほか喜び、勧めてきたのが弟2人だったという。「いつになく前向きな会議になりましたね。両親も『そこまでいうなら』となりましたし」。上の弟は選挙期間中、兄とともに暮らし、選挙戦を支え続けることになる。

選挙戦まで残すところわずか半年、右も左もわからないままの戦いが始まることになった。

■やれることはどんどんと

兵庫・芦屋市長選への出馬を決意したものの、右も左もわからない状況は変わらない。周囲に相談しても「勝てるわけがないからやめたほうがいい」といさめられた。さてどうするか。

「先輩に話を聞きに行こう」

先輩とは平成29年の大阪・四條畷市長選に28歳で挑戦、現職首長として最年少市長となった東修平氏がその人だ。先日、3選不出馬とともに、後継候補を民間公募すると表明し、大きな話題を呼んだ。