【西武投手王国への道】歴史的低迷に苦しむチーム 力のある投手陣をチームの勝利に結びつけるために
【埼玉西武ライオンズ 投手王国への道】 パ・リーグを戦う西武の最大のストロングポイントである投手陣。近年、急速に力をつけてきたが、その裏には一体、何が隠されているのか。ライオンズ投手王国への道を追う――。 取材・文=中島大輔 写真=兼村竜介 【選手データ】渡辺久信 プロフィール・通算成績
点を取らないとうまくかみ合わない
シーズン序盤から歴史的な不振に苦しむ西武が8月12日の日本ハム戦(エスコンF)に敗れ、41試合を残して優勝の可能性が完全消滅、シーズン負け越しが決定した。 開幕前には投手力を根拠に優勝候補に挙げる声もあったが、同日時点で1試合平均得点2.3と打線があまりにも援護できず、チーム防御率3.28(リーグ5位)の投手陣も踏ん張ることができなかった。 歴史的低迷のチームを振り返って思い出されるのが、松井稼頭央監督の休養を発表した5月26日、後を継いだ渡辺久信GM兼監督代行が就任会見で語った話だ。 「野球界では『ピッチャーがいいチームは大きな連敗をしない』と言われていますが、やはり点を取らないとうまくかみ合わない。ピッチャーがいてもなかなか勝てない、連敗すると実感しています。やっぱり攻撃陣。何とかして1、2点をもぎ取っていく」 だが、指揮官が代わっても得点力は改善されなかった。バントやヒットエンドランなど小技を絡めようとしても、不発に終わる場面が続出したのだ。 「ここ数年、練習量が少なかった。いろんな部分の練習量は(GMとして)外から見ていても『あれ?』と思うものはあったけど、そこはあえて現場には言わなかった」 シーズン前半戦の最後、渡辺監督代行は「小技ができていない」と攻撃の課題を挙げた。そこでオールスターブレーク中にじっくり話を聞くと、上記の答えが返ってきた。全体的に練習不足を感じたが、チーム編成を司るGMが現場の方針に口をはさむと監督やコーチはやりにくくなると自身の経験から分かっていたから、あえて口をつぐんだわけだ。 だが、チームの不振で11年ぶりに指揮を執ることになり、小技を思うように使えないことが攻撃の選択肢をせばめ、得点力不足に依然苦しめられている。 西武の最大の問題は明らかに攻撃陣の戦力不足だ。そこでGMとしての中期的なチームづくりを尋ねると語られたのは「投手王国」を目指す経緯だった。 「メディアはみんな、ここ2年くらい『野手が打てない』って鬼の首をとったみたいに騒いでいるけど、そういう時期はどこの球団にもあると思います。今のうちは、野手がその時期に来ている。だって“山賊打線”のとき、ピッチャーのことをいろいろ言われたじゃないですか。だから俺、『3年後までに投手王国をつくる』と宣言したでしょ? そうやって獲った選手たちが育って今、そこそこの投手陣になっている。そうして結果が出るとみんな、投手陣のことは一切言わなくなりますもんね」 球史に語り継がれるほどの打力を武器に2018、19年にリーグ連覇を飾った際、チーム防御率は4点台でいずれもリーグ最低だった。