【西武投手王国への道】歴史的低迷に苦しむチーム 力のある投手陣をチームの勝利に結びつけるために
投手陣をどん底から再建した“実績”
なぜ、西武の若手投手は育たないのか――。 筆者は原因を追究した一人だ。 当時現役投手で、現在球団スタッフの十亀剣や榎田大樹は後輩たちの「キャッチボールの意識」に苦言を呈した。20年に着任した豊田清投手コーチは同じ問題を感じ、立て直してきたのは過去の連載で述べたとおりだ。この間に飛躍したのが今季初の開幕投手を務めた今井達也やエース格の高橋光成、リリーフで実績を重ねた平良海馬らだった。 同時に渡辺GMは「投手王国をつくる」と宣言し、ドラフトで隅田知一郎(21年1位)、佐藤隼輔(同2位)、武内夏暉(23年1位)ら即戦力候補の大卒投手を上位で指名。特に競合で獲得した隅田と武内は今季先発で不可欠な存在になっている。 一方、昨年から続く低迷の原因と指摘されるのが「ドラフトの失敗」だ。過去10年間に1、2位で指名した野手は西川愛也(17年2位)、渡部健人(20年1位)、蛭間拓哉(22年1位)、古川雄大(22年2位)の4人のみ。ゆえに「投手偏重」と言われるが、渡辺GMは反論する。 「ドラフトだからピッチャーのほうが多くなるのは当然なんですよね。野手も獲っているけど、成長スピードがまだ追いついてないというか」 野球の競技特性上、勝敗を大きく左右するのはボールを先に投げ込む投手だ。確かに、ドラフトで評価の高い投手は各球団から優先的に指名される傾向がある。 だが、野球のトレンドは刻々と変化している。数年前から顕著になっているのが“投高打低”だ。テクノロジーやトレーニングの進化などで投手のレベルアップが進み、両リーグともに3割打者がほぼ消えた。“助っ人”と言われる外国人選手もなかなか活躍できなくなり、ロッテのようにNPB経験のある外国人打者を中心に獲得するチームもある。球界全体で優れた打者が減少している以上、アマチュアや海外から可能性のある打者をいかに見つけ出すかの重要性が相対的にも増していると言えるだろう。 そんな中で「投手王国」を目指した西武は新外国人打者の不振、若手野手の伸び悩み、FAによる主力の退団、投手陣ではリリーフ陣の不調が負の連鎖となり、チームは4カ月連続の8連敗を喫するくらい低迷した。残り40試合を切り、プロ野球史上2度目のシーズン100敗も危ぶまれるほどだ。 チームの再建には一定の時間がかかるだろう。それほど若手野手の伸び悩みは深刻だ。7月中盤から四番に座る山村崇嘉、大卒2年目の蛭間には明るい兆しも見えるが、野手陣の底上げが不可欠である。 だが同時に、西武にはどん底から立て直してきた実績もある。例えば5年前のリーグ連覇時、投手陣はリーグ最低の防御率だった。そこから現有戦力まで整え、リーグ上位と言われるまでにさまざまな手を打って整備してきた。 隅田や武内、今季成長した姿を見せる渡邉勇太朗はまだ若く、伸びしろも残している。力のある投手陣をチームの勝利に結びつけるためにも、攻撃陣の立て直しに期待したい。
週刊ベースボール