日本での成功を生んだ、外国名画の「絶妙な邦題」、「ランボー」の原題は直訳すると「最初の血」
日本の映画監督の作品1本の報酬は、制作費にもよりますが、平均すると300万~500万円といわれています。企画段階からさまざまな工程を経て作品が完成するまで数年かかりますから、年収で換算すると厳しい数字になります。 そのため、ミュージシャンのMV(ミュージックビデオ)や企業コマーシャルを撮影したり、教育機関で演劇や映像を教える講師業(ワークショップ)をしたり、雑誌コラムの原稿を執筆する文筆業などで生計を立てている映画監督は少なくありません。
■そもそも邦画は制作費が低く抑えられている 邦画の制作費はハリウッドなどと比較して低水準です。国内経済の影響も色濃く受けますから、低迷期であれば制作費も連動して縮小傾向になります。 ロバート・ゼメキス監督の「フォレスト・ガンプ/一期一会」(1994)のオープニングに、開いた本の中からひとひらの羽根が舞い上がるCGのシーンがありますが、北野武監督はインタビューで、「あの羽根のシーンだけで自分の映画が1本撮れる」と話していました。日米の環境の違いを象徴するような発言です。
ハリウッドのビッグバジェット・ムービー(大作映画)は約1億ドル以上(約140億円以上。ここでは1ドル140円で換算します)の作品を指しますが、邦画は1億円未満がほとんどです。10億円超の映画は年間数本しか存在しません。アメリカでは、学生映画でも100万ドル(約1億4000万円)の制作費が標準です。 インディーズの世界にはインディペンデント・スピリット賞があり、メジャー映画会社以外の会社が制作した作品を対象にしていますが、広告宣伝費などを除いた直接制作費2000万ドル以下(約28億円以下)の作品が基準になっています。アメリカでは28億円以下の制作費の作品がインディペンデント(自主制作)映画なのです。
このように映画の制作環境には差があります。邦画の制作費は低く抑えられているので、映画監督の収入も必然的に少なくなってしまうのです。
コトブキツカサ :映画パーソナリティ、エンタメ評論家