日本での成功を生んだ、外国名画の「絶妙な邦題」、「ランボー」の原題は直訳すると「最初の血」
一定年齢以上の方にとって水野氏は、1970年代のテレビ番組で映画解説を担当する際、「いやぁ、映画って本当にいいもんですね」と語ってお茶の間の人気を集めた映画評論家として知られていますが、もともとは映画配給会社の宣伝総支配人として、「ビートルズがやって来るヤァ! ヤァ! ヤァ!」(1964、原題は「A Hard Days Night」)など、数々の邦題を考案したとされています。 ■映画ファンからすると「残念な邦題」も
以上のように原題に比べて日本の観客に伝わるよう工夫した邦題もありますが、映画ファンからすると「残念な邦題」も存在します。 例えば、アカデミー賞9部門にノミネートされ、アルフォンソ・キュアロンが監督賞などを受賞した「ゼロ・グラビティ」(2013)の原題は、真逆の意味の「Gravity」(グラビティ=重力)です。「重力」というタイトルの映画を「無重力」(ゼロ・グラビティ)にしたため、一部の映画ファンがSNSなどで嘆きました。
公開前に同作品の関係者から聞いた話によると、社内会議では最初に原題を直訳した「重力」にする案が出たようです。邦画の歴史をひもとくと漢字2文字のタイトルが定番としてあることと、当時、松たか子さんの主演映画「告白」(2010)が大ヒットしていた影響もあったといいます。 しかし、反対意見が出たため白紙に戻り、その後、ベストセラー小説『永遠の0』の映画化が発表され、公開時期が両作品とも2013年12月だったことから、「ゼロ対決」という話題性も期待した上で「ゼロ・グラビティ」になったそうです。
もう1本取り上げたい作品が「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015)です。 原題は「Mad Max: Fury Road」。マッドマックスはそのままですが、サブタイトルは「フューリー・ロード」です。今の邦題が嫌いというわけではないのですが、僕は作品解釈的に原題にある副題のほうがよかったと思っています。 フューリー・ロードのフューリーとは「怒り」の意味で、ギリシャ神話の復讐の女神「フューリー」から派生した言葉ですが、この物語はイモータン・ジョーの軍団に虐げられてきた女性たちが、逃げた道を引き返して復讐する話だけに、フューリー・ロードというサブタイトルが大事なのです。