手作りせっけんで肌も、地球も、未来も変わる「石鹸工房コクーン」相田かおりさん
日本でせっけんを製造しているメーカーは、すでに原料が混ざった状態の “せっけん素地” を使っていることがほとんどだが、コクーンではコールドプロセス製法で一からせっけんを作っている。 「肌質に合わせたり、肌を整えたりするせっけんを表現しようとしてたどり着いた製法です。食べ物でいうとスパイスからカレーを作っていくようなイメージで、せっけんそのものに特長を出しやすいため、スキンケアしながら汚れを落とすという働きができます。ベースから作っていくので1個のせっけんが出来上がるのにかかる時間は約1000時間。出来上がったせっけんの表面はチーズのようにしっとりしているのですが、お客様が触った時に心地がいいように一つずつ手磨きして仕上げています。 市販のせっけんのほとんどは機械練りですが、コクーンはオイルからベースを作っているので時間がかかりますし、今でも7割ほどは手作業なのでなかなか大量生産できません。製造は6人のスタッフで行いますが、お店の販売スタッフとして入社する人も、一度は製造所でせっけん作りに携わるようにしています」
せっけんは、未来の地球の美しさにもつながっている
そんなふうに手間ひまかけて作られたせっけんは、実は地球の未来ともつながっているアイテムなのだとか。 「せっけんの材料は油と水、苛性ソーダも原料が塩なのですべてが自然由来。生分解性が非常に高く、川に流しても微生物に分解されて水に戻っていきますが、合成洗剤は戻りにくいので生態系を変えていってしまいます。もし世界中の合成洗剤がせっけんに変わったら本当に水がきれいになると思います。私たちは食器用や洗濯用、髪の毛用のせっけんも作っているのですが、せっけんにこだわる方は暮らしにこだわる方が多く、生活に関わる洗剤を環境負荷をかけないせっけんに置き換えたいという方も多いです。合成界面活性剤よりも水切れがよいので、実は時短アイテムでもあります」 最後に、相田さんに改めてせっけんに対する思いを聞くとこんな答えが返ってきた。 「私も自分がニキビ肌だった時に思ったんですけど、肌質などの悩みやコンプレックスは性格まで変えてしまうし、性格が変わると生活や人生も変わっていきます。私たちにできるのはせっけんを通してそうしたお悩みをケアしていくことで、スキンケア商品も製造していますがせっけんへの思いは強いです。一人でも多くのトラブルに寄り添って肌をケアしていきたいし、肌の駆け込み寺のようなイメージで、何かあった時に来ていただける場所にしていきたいと思っています。 せっけんの原料は自然界にあるものでもともと肌にも備わっているもの。これから地球と共生していくためにどうしていくかを考えると、余分なものを加えず自然界にあるもので暮らしていくことが大切だと思うんです。美しさの概念も自然と同じでありのままがきれいというふうに暮らしていけたらすごく豊か。合成洗剤がすべてせっけんに変わったら環境が変わると思うので、コクーンはそうした暮らしに寄り添えるアイテムとして、顔だけでなく暮らしの中に取り入れられる形で発信していきたいです。 ヨーロッパでは固形せっけんが野菜のように買えて、せっけんで歯を磨いている地域もあるくらい身近なので、日本もいつかそうなったらいいなと思っています」
取材・文:後藤花絵