「サカイ」と協働 伝統とモダンが交差する「バニー/ユージ」の日常に寄り添うエレガンス
ーークリエーション面ではどんな相互作用が生まれましたか?
アンドリュー:私が専門とするジュエリーは職人技に基づいた極めて伝統的なものです。一方でユージンの専門であるインダストリアル・デザインはより現代的なもの。ただし、それぞれの感性や興味には共通する部分があって、お互いの世界をリスペクトしています。2人の世界がどちらも活かされるからこそ、おもしろいものが生まれました。
ユージン:2人の世界が交差するポイントを探る作業は面白かったです。
アンドリュー:花瓶の製造技法は元来とても伝統的なものですが、デザインはモダンです。技術的に難しい部分がいくつもあり、職人たちにとって未経験のこともありましたが、実現したいイメージを理解してもらい、難しさも醍醐味として感じてもらいつつ完成に近づけました。
ユージン:花瓶の製造はすべて手作業。何人もの職人が各工程に関わり、完成に7週間もかかります。以前関わっていたインダストリアル・デザインでは、人間の形跡は製品から消され、7週間あれば50万個のプロダクトを作るような世界。今回、伝統的手法でものづくりに関われたのは、新鮮な経験でした。
精巧な職人技と緻密なコミュニケーションで
オーセンティックなデザインを実現
ーー具体的なデザインはどのように進めましたか?
アンドリュー:まずはアイデアを話し合います。ある程度アイデアが固まったら、ユージンが厳密にスケッチを作ります。それは最終的なプロダクトにとても近いイメージです。スケッチを活用して、職人チームと丁寧にコミュニケーションを取りました。
花瓶は、フラットな金属板を「スピニング」という技法で回転させながら成形しています。特に難しかったのはリップ(折り返し)の部分。技術的な課題は他にもたくさんありましたが、職人たちの技術とアイデアでクリアしていきました。
私たちはロンドンとサンフランシスコという離れた場所で活動していますが、テキストメッセージや写真、ビデオ、テクニカル・ドローイング(設計図)などで迅速にイメージを共有していきました。伝統的な技術と、現代のコミュニケーション・ツールを駆使することでプロジェクトが実現したんです。