被災地に響く「戦場のメリークリスマス」3.11以降、坂本龍一に何が起きたのか
悔しくなってしまうくらいにフォトジェニック
坂本龍一はフォトジェニックだ。その容貌が多くの映画監督を魅了した。スティーヴン・ノムラ・シブル監督も魅了されたひとり。 シブル:そう。悔しくなってしまうくらいにフォトジェニックですね、坂本さんは(笑)。そういう運命の方なんでしょう。よく撮影部と色の調整をしながら、なんでこんなにフォトジェニックなんだろうと話していました。20代も、30代も、今も、フォトジェニック。今のニューヨークは、コンポーザーや小説家みたいな人が住む街じゃなくなってしまいました。地価もあがり、いわゆるアーティストがふらふらといられる街ではない。でも坂本さんはもっと純粋にニューヨークがアートを内包していた時代の人。ポール・ボウルズの言葉は、もともと好きだとおっしゃっていましたが、ご病気をされた後、特に彼の言葉が響くようになったのかもしれませんね。 「人は自分の死を予知できず、人生を尽きせぬ泉だと思う。だが、物事はすべて数回起こるか起こらないかだ。自分の人生を左右したと思えるほど大切な子どもの頃の思い出も、あと何回心に思い浮かべるか? せいぜい4、5回思い出すくらいだ。あと何回満月を眺めるか? せいぜい20回だろう。だが人は無限の機会があると思い込んでいる」――ポール・ボウルズ『シェルタリング・スカイ』より (取材・文・撮影:関口裕子)
『Ryuichi Sakamoto: CODA』11月4日(土) 角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開 配給:KADOKAWA