「みどりの窓口廃止」が招いた大混乱、デジタル戦略の裏に潜むJR東日本の“ある誤算”
「みどりの窓口」にできる長い行列が問題になっている。JR東日本では、「みどりの窓口」を次々と廃止し、指定席は「えきねっと」、定期券は「モバイルSuica」を使用することを呼びかけるものの、うまくいってはいない。JR東日本は企業戦略としてインターネット使用やモバイル強化を掲げているが、鉄道利用者を置き去りにして押し進めている。企業の方針第一の戦略は、時として利用者の反発を招くが、鉄道ビジネスで利用者にどう向き合うかのケーススタディーとなり得るのがこの問題だ。 【詳細な図や写真】JR東日本が見据える鉄道による移動ニーズの減少(出典:JR東日本グループ経営ビジョン「変革2027」)
失敗に終わった「みどりの窓口」の廃止計画
JR東日本の大きな駅では、「みどりの窓口」に行列ができる状態が続いている。多くの駅で「みどりの窓口」を廃止し、特急の指定席や複雑なきっぷ、あるいは定期券などを買い求める人が「みどりの窓口」に押し寄せる状況が続いているからだ。 JR東日本は、「みどりの窓口」を減らす方針を立てている。2021年5月にこの方針を立てた際に、同社管内440駅にあったこの窓口を、2025年までに140駅程度にまでする予定としていた。この方針は急激に進められ、2024年4月時点で209駅にまで減っている。 これに対する反発は大きかった。利用者の不満の声はJR東日本に多く寄せられ、ネットメディアを中心に「みどりの窓口行列問題」がさかんに取り上げられていた。 その状況を受け、JR東日本の喜勢陽一社長は、2024年5月8日の記者会見で「みどりの窓口」の削減方針をいったん凍結すると発表した。理由としては、チケットレス化が想定通り進まないこと、インバウンド対応で利用者が増えたことなどが挙げられる。 2024年6月4日、喜勢陽一社長は埼玉県内の川口駅など首都圏の15駅で「みどりの窓口」を復活させることを表明した。ただし、お盆など指定席需要が高まる時期や、年度末の定期券購入シーズンなどの繁忙期にのみ復活だ。 川口駅や北朝霞駅などの「みどりの窓口」を全廃した6駅は、臨時の窓口を設け、蒲田駅や登戸駅などの窓口を縮小した9駅では、閉鎖した窓口を復活させる方向だ。 「みどりの窓口」を一気に削減することで人件費を大きく減らし、鉄道利用者にはネットでの予約や購入に移行してもらう、というJR東日本の方針は失敗したといえる。 では、JR東日本は、一体どのような戦略を考えていたのだろうか。