新3本の矢「GDP600兆円」 GDPが増えるとはどういうこと?
「金融」「財政」「成長戦略」を3本の矢とする経済政策「アベノミクス」を推し進めてきた安倍政権。昨年9月には第2ステージとして「新3本の矢」を打ち出しました。「出生率1.8への回復」や「介護離職ゼロ」など社会保障に関する項目が並ぶ中、目を引くのが「名目GDP600兆円達成」。今回は、この国内総生産(GDP)600兆円とはどういう目標なのか、実現可能性はあるのか、などについて、岡山大学経済学部の釣雅雄・准教授に寄稿してもらいました。 【写真】アベノミクス3年 指標から見る成果と課題
●達成には年率3.45%の成長が必要
アベノミクス第二ステージでは、「新3本の矢」における第一の矢に、名目GDP600兆円を2020年頃に達成することを目標に掲げています。 600兆円といっても、ピンと来ないかもしれませんが、これを家計の年収600万円と置き換えるとわかりやすいでしょう。あくまで数字は例ですが、現在、500万円の年収が600万円になるとしたら、どうでしょうか。(年功賃金も考慮すると、 今の40歳の人が年収500万円だとして、6年後の40歳の人はそれが600万円になっている状況です) この目標を他の政策と比較してみましょう。来年度、高齢者1100万人に3万円を給付する(臨時給付金)ことになりそうです。これは比較的大きな規模の給付です。一方で、就業者は6000万人を超えます。GDP600兆円が実現すると、就業者1人あたりでは数十万円単位の規模で所得が増えるのです。臨時給付金に比べて、人数は5倍以上、1人あたりの額は10倍以上になります。給付するわけではないのですが、そう考えると、名目GDP600兆円はかなり高い目標といえます。 2014年度の名目GDPは約486兆6000億円でしたので、2020年にこの目標を達成するには平均で年率3.45%の成長が必要となります。ちなみに、この6年前の2008年度は 、偶然にも489.5兆円で2014年度とほぼ同じです。すなわち過去6年間の平均名目成長率はゼロだったのです。過去6年がゼロ成長だったものを、今後6年は3%以上にというのはかなり難しそうです。