【スプリンターズS】ルガル 涙、涙の人馬G1初制覇 24度目挑戦の西村淳「何も覚えてない」
「スプリンターズS・G1」(29日、中山) 秋の電撃王に輝いたのは9番人気のルガルだ。デビュー7年目の西村淳に導かれ、超ハイペースを3番手からの横綱相撲で人馬そろってG1初制覇。見事に1番人気で10着に敗れた高松宮記念のリベンジを果たした。2着は5番人気のトウシンマカオ、3着には4番人気ナムラクレアが入り、1番人気のサトノレーヴは見せ場なく7着に終わった。 3番手で回った4コーナーも、直線の急坂も全く覚えていない。「おまえ、ゴール前から泣いてたぞ」。後ろからの坂井の声にグータッチで応え、西村淳は初めてハッとした。調教から騎乗し、杉山晴師が起用し続けてくれた相棒ルガルとともに、初めてのG1タイトルをつかみ取った。 スタンド前に戻ってくるとゴーグルの上からもう一度、目頭を押さえた。テレビのインタビューでも目は真っ赤。「騎手生活をしてきて、本当に良かったです。本当に何も覚えてないです。すみません」。デビュー7年目、24度目の挑戦で果たしたG1ジョッキーの仲間入り。初めて見る景色をグッとかみしめた。 馬は高松宮記念後に左前脚の膝の骨折が判明。全治6カ月の診断だったが、このレース当日が6カ月と5日目。杉山晴師は「ぎりぎり間に合った。使うにはそれだけ経過を見るのも必要で、馬は思った以上に対応してくれました」という。重賞初勝利を挙げたシルクロードSと同じ状態までは仕上げられた。 そして事前に鞍上と決めたレースプランも、そのシルクロードSの再現だった。「ゲート内はおとなしかったわけでもないし、五分に出したのはジョッキーを褒めるべきです。彼はデビューしたころからゲートセンスが高かった。五分に出たところからは安心して、冷静に見られました。シルクロードSのイメージ。その通りになりましたね」。3F通過が32秒1と超がつくハイペースのなかで、好位から押し切る強い勝ち方を披露した。 もちろん、今後への夢も膨らむ。指揮官は「骨折リハビリ明けですから、まずは無事に。ただ、いろいろ選択肢があります。海外を含め、オーナーと時間をかけて相談します」と話した。年末の香港スプリント、年明けは中東への参戦や高松宮記念でのリベンジも、もちろん視野に入ってくるだろう。混戦模様だった短距離界を統一する道のりが始まった。