UFC・鶴屋怜がRIZINのリングに上がらなかったワケ プロ2戦目で受けた「おいしい」オファーも「お断りした」
新春インタビュー企画Part2
プロ戦績10戦無敗のUFCファイター・鶴屋怜(22=THE BLACKBELT JAPAN)。世界の舞台で戦うMMA界の新星は、国内最大プロモーション「RIZIN」で試合することなく「Road To UFC シーズン2」のトーナメントを制し自らの手で契約をつかんだ。国内ではRIZINを目指す格闘家が多いなか、なぜ鶴屋は選ばなかったのか。新春インタビューPart2。(取材・文=島田将斗) 【写真】「若い選手の目標になれば」 山本KIDに憧れ購入した鶴屋の愛車外国車 格闘技イベント「RIZIN」はかつて地上波でも放送されていただけあって世間の認知度は高い。堀口恭司やRENAなどが主戦場にしてきた。昨年12月にUFCデビュー戦でフライ級タイトル戦を行った朝倉海も看板選手のひとり。朝倉はバンタム級の王座を返上しUFCと契約を結んだ。 鶴屋は格闘技団体「DEEP」でプロデビュー。その後は「PANCRASE」を主戦場とし、フライ級キング・オブ・パンクラシストとなっていた。2023年5月から始まった「Road To UFC シーズン2」のトーナメントを制し、昨年2月にUFCと契約。一度も「RIZIN」には出場していない。その理由をこう明かす。 「RIZINに行ってからUFCという道もあったのかもしれないですけど、遠回りをしてられなかったです。RIZINに行ってたらもう1年UFCとの契約が遅くなってたかもしれない。自分の中では『はやく行かないと(平良)達郎くんにも取られちゃう可能性ある』と思いました」 RIZINがこんな逸材に気付かなかったわけではない。2021年、鶴屋がプロ2戦目のころにオファーを出している。 「RIZIN沖縄大会があってそのときにオファーはありました。それに出ても良かったかもしれないのですが、目先のものではなくてその先のものが欲しかったのでお断りしました」 RIZINに出場すれば、運営側のプロモーションに加え、さまざまなメディアが取り上げる。そのため選手として国内での知名度がぐんと上がる。全く惜しくなかったと言えばうそになる。 「正直ファイトマネーも2戦目の自分からしたら結構大きかったし、おいしい話ではあったんです。高校卒業したばかりの自分でもあったので。自分の目標はUFCだってことで行きませんでしたね。 ルールも違うじゃないですか。そこに慣れてしまうとUFCでアジャストするのも大変だし父の助言もありました。父はあまり言わないかもしれないですけど、絶対にUFCチャンピオンになってほしいって一番思ってる。だからこそあのときも『UFC行った方がいいんじゃないの』って言ってくれました」 鶴屋にとってはRIZINは「別ジャンル」。どんなイメージなのか。 「UFC王者になりたいって思った中学時代からRIZINは観戦しに行ってたし、普通に見るものとしては面白い。格闘技の1ジャンルとしては好きです。日本ではトップ団体ですけど、UFCとルール、ラウンド数でも全然違う。リングだし、サッカーボールキックありかなしかでも大分変わります。同じスポーツだけど少し違う。レスリングで言うと、フリースタイルかグレコローマンかぐらい。“ジャンルが違う”っていうのも俺の中では大きかったですね」 昨年行われた所属ジム「THE BLACKBELT JAPAN」の発足会見後には「『有名になりたい』でRIZINに行ってしまう若い選手が多い」と複雑な胸中を明かしていたが、この考えも徐々に変化してきているようだ。 「選手によって目標は違うし、各々どこを目指しても別にいいと思います。ただ俺はUFC目指しているだけ。逆にUFC目指したい日本人が少なければ少ないほど、自分がUFCチャンピオンになる可能性も高くなる」 国内選手の多くが目指す舞台「RIZIN」。魅力的なオファーを蹴り、UFCへの一番の近道を選んだ理由は同門でありライバルの平良達郎の存在だった。
島田将斗