〝厄介者〟もみ殻を土壌改良材に 富山のJA 農薬低減と品質向上を両立
農地に占める水田の割合が高い富山県のJAいみず野は、地域で出たもみ殻を活用した土壌改良資材の普及に力を注ぐ。もみ殻には稲の生育に必要なシリカ(ケイ酸)が含まれ、これを吸収しやすいよう灰に処理。農薬や化学肥料、生産コストの低減と収量や品質向上の両立が期待できる。 JAはカントリーエレベーターで大量に出るもみ殻の処理に苦慮していた。もみ殻はかつて野焼きなどで処分したが、現在は廃棄物処理法で野焼きが禁止され、費用をかけて処理をしなければならなくなったため、再利用を検討した。 また、産官学民連携の一環で、JAや射水市、富山県立大学などで2010年に発足したもみ殻循環プロジェクトチームは、もみ殻には稲の生育に必要なケイ酸が含まれていることに着目。地元の工業炉メーカーと協力し、有毒ガスを排出しない炉内温度制御をしながら、もみ殻を燃焼させ水に溶けて吸収しやすいシリカ灰を作り出す燃焼技術を確立した。燃焼時に発生する熱はイチゴハウスの暖房にも使い、バイオマス(生物由来資源)エネルギーの活用も実現させた。
コスト低減の効果も
JAは商品化に向け、22年から2年間試験を重ねた。同市の73ヘクタールで米「コシヒカリ」や麦、大豆を作る土合営農組合が試験に協力し、生育や品質には全く問題ないことを確かめた。代表の夏野勝文さん(75)は「もみ殻由来の土壌改良資材は、元々使っていたものより約1割安く済むため、ありがたい」とコスト低減の効果も話す。 国への登録を経てJAは今年、もみ殻由来の土壌改良資材「シリカエールプラス」「加里入りシリカエールプラス」を販売。茎や葉を丈夫にし倒伏しにくくする効果や、割れもみによるカメムシ被害の軽減も見込める。施用は10アール当たり100キロが目安だ。 JAは24年度、1500トンの販売目標を掲げ、将来的には管内全域で散布してもらうことで、国が掲げる「みどりの食料システム戦略」につなげる。 近年の肥料高騰で、大規模で耕作する営農組合の経営は厳しい状況にある。JA営農指導課の高田勝弘課長は「市産農産物の安定生産と品質維持を両立させ、持続可能な農業確立を進めたい」と力を込める。
日本農業新聞